新潟県弁護士会

声明・意見書

2013年03月1日|声明・意見書

東京電力福島第一原子力発電所事故による損害賠償請求権の消滅時効に関する総会決議

第一 決議の趣旨
当会は、国に対し、東京電力福島第一原子力発電所事故の損害賠償請求権について、対象となる被害者に消滅時効による不利益が生じることのないよう、抜本的な立法措置を講ずることを求める。

第二 決議の理由
1 本件事故の特殊性
東京電力福島第一原子力発電所(以下「本件原発」という。)事故(以下「本件事故」という。)に伴う被害は、深刻かつ広範であり、いまだその全容も明らかでない。
本件原発が存在する福島県のみならず、その他の地域においても放射能汚染が広がっている。福島県内はもちろんその他の地域においても、放射能汚染のリスクが少ないと思われる地域に避難した者は少なくない。また、放射能汚染によって、農産物を始めとし、観光業なども被害を被っており、風評被害の影響も甚大である。
2011年12月15日に政府が「冷温停止宣言」をしたことを受け、2012年4月から警戒区域が帰還困難区域・居住制限区域・避難指示解除準備区域に再編されつつある。
もっとも、放射線量は依然として高いところも多く、政府の上記宣言をもって、放射線汚染が収束に向かっていると言うことはできない状況にある。避難者が帰還しようとしても、長い間、人が住むことのなかった住居・地域の社会的インフラの回復には相当の時間を要することは明らかである。
また、放射能汚染が懸念される地域にとどまった人々も、放射能汚染のリスクがなくなったわけではなく、放射線被ばくの危険と向き合い、多大な経済的損害、精神的損害等を被り、苦しみながら生活している。
そして、現時点において、新潟県内に約6000人弱の避難者が避難生活を余儀なくされていることからも、本件事故による被害は未だ継続中であると言わざるを得ない。
このような本件事故の深刻性、広範性、継続性に照らせば、本件事故は、本件原発からの放射の汚染のリスクがなくなり、安全が確保されて、初めて収束するものである。本件事故による未曾有の被害を受けた被害者には、自らの被害を把握し、その被害回復の方策を十分に吟味、検討した上、被害に見合った賠償を受ける途が十分に確保されなければならない。
2 消滅時効に関する問題点
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴い、本件事故が発生し、既に2年が経過しようとしている。そのため、民法724条の解釈如何によっては、2014年3月11日の経過をもって、本件事故の被害者の損害賠償請求権について消滅時効が適用される可能性は否定できないという懸念がある。
東京電力の本件事故による損害賠償に関する総合特別事業計画の変更申請は、本年2月4日に経済産業大臣の認定を受けた。東京電力によれば、被害者が東京電力から請求書やダイレクトメール(以下「請求書等」という。)を受領したときから消滅時効期間が進行する取り扱いをするとのことである。
しかし、未だ避難継続中である被害者は全国では10万人を超え、原発事故による放射能の影響についても、いつ収束するかもわからない状況の中、被害者が請求書等を受領したといっても、東京電力に対し、どのように賠償を請求したらよいのか決めかね、請求できないでいる者も少なからずいる。
また、原子力損害賠償紛争解決センターへの申立てを行ったとしても、その手続きの進行が遅延しており、迅速かつ適切な紛争解決が図られているとは言えず、時効の中断効が認められていない現状においては、同センターへの申立ては時効の進行を止める手立てとなっていない。損害賠償の時効中断のため、訴訟提起するといっても、被害者が訴訟提起に踏み切るには、時間、労力等の観点からハードルが高いと思われ、全ての被害者について、民法の本則的な時効中断方法が実効的に行使されることは、ほとんど期し難い状況にある。
上述の本件事故の特殊性、及びこれらの現状の賠償手続きの状況に照らせば、消滅時効の規定の適用によって、被害者が損害賠償請求権を行使することができなくなるといった事態は厳に避けなければならず、またそのような事態を招来することは著しく正義に反する。
3 抜本的な立法措置の必要性
上記消滅時効の問題点を回避する方策として、東京電力株式会社は、消滅時効を援用しないこと事実上表明するといった対応や、消滅時効の起算点について、請求書等を受領してから3年とするといった特別事業計画の変更による対応が表明されてきたところである。
しかしながら、これらの対応は、あくまで事実上の対応、あるいは従来の民法の理論的な解釈によるものにすぎず、不安定な方策と言わざるを得ない。そのような不安定な方策であっては、被害者の消滅時効の適用の懸念を払拭することはできず、その結果、自らの被害の回復手段について十分な検討をすることができないまま、賠償請求権の行使について判断せざるをえない。
そのため、本件事故に関する消滅時効の問題については、抜本的な立法措置により、時効による権利喪失といった事態を回避することが必要不可欠である。
4 抜本的な立法措置を講ずるべきこと
そこで、国は、本件事故の損害賠償請求権についての消滅時効の適用について、立法措置を講ずるべきである。
すなわち、全ての被害者を救済するためには、裁判外紛争手続きを利用した被害者のみが適用を受けるといった立法措置ではなく、あまねく広く本件事故に基づく損害賠償請求権について、消滅時効の適用の懸念を払拭する立法措置を構講ずるべきである。
現状においても、訴訟提起による時効中断の効果を期待するには、事実上の問題点が多いことや、原子力損害賠償紛争解決センターへの申立て件数も、現在わずか5000件台にあることや、調査官の増大による手続きの遅延等の問題解消も限界がある。したがって、一定の手続き、申立てを行った被害者のみ部分的に消滅時効の適用を回避できるといった立法措置は、不十分であり、被害者に消滅時効による不利益が生じないよう、抜本的な立法措置を講ずる必要がある。
5 当会の決意
当会は、ここに、被害者が、広く本件事故による消滅時効の適用を回避し、自らの損害の回復について十分に熟慮し、その方法についても検討することができるよう、国に対し、本件事故の消滅時効の適用については、民法724条の適用を当面停止するか、または、全ての被害者が完全な賠償を受けるために必要十分な期間まで消滅時効期間を延長するなどの規定を入れた特別立法を制定するなど、抜本的な立法措置を講ずることを求める。

2013年(平成25年)2月28日
新潟県弁護士会臨時総会決議

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