新潟県弁護士会

声明・意見書

2010年08月3日|声明・意見書

高校無償化法の平等な適用を求める会長声明

1 政府は、本年4月1日、「公立高等学校にかかる授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下、「高校無償化法」という。)を施行した。
高校無償化法の対象となる「高等学校等」には、「高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定める」各種学校が含まれている(同法2条1項5号)。
2 しかるに、文部科学省は、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則」(以下、「本件省令」という。)において、高校無償化法の対象となる外国人学校の要件について、「高等学校に対応する外国の学校の課程と同等の課程を有するものとして当該外国の学校教育制度において位置付けられたものであって、文部科学大臣が指定したもの」(本件省令1条1項2号イ)「イに掲げるもののほか、その教育活動等について、文部科学大臣が指定する団体の認定を受けたものであって、文部科学大臣が指定したもの」(同号ロ)「イ及びロに掲げるもののほか、文部科学大臣が定めるところにより、高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして、文部科学大臣が指定したもの」(同号ハ)と定めた上、平成22年4月30日付告示「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第1条第1項第2号イ及びロの各種学校及び団体を指定する件」(以下、「本件告示」という。)において、「高等学校の過程に類する過程を置くもの」として、朝鮮高級学校以外の外国人学校(以下、「他の外国人学校」という。)をすべて指定したにもかかわらず、朝鮮高級学校を指定しなかった。
3 しかしながら、これらの政府の対応は、朝鮮高級学校に通う子どもについても、憲法14条1項によって、他の外国籍の子どもとの間で合理的理由なくして差別的取扱いを受けない権利が保障されていること、さらに、朝鮮高級学校に通う子どもにも、教育を受ける権利(憲法26条1項)が保障され、子どもの権利条約が民族教育の尊重を教育の目的として指向していること(子どもの権利条約29条1項(c)(d))、国際人権規約(社会権規約2条2項、13条、自由権規約26条)、人種差別撤廃条約5条等の定めに照らし、疑問であると言わざるを得ない。
(1) すなわち、朝鮮高級学校は、各都道府県知事から各種学校としての認可を受け、その際認可に必要な範囲で教育課程についての情報も提供され、長年にわたり安定した教育を実施している。そして、日本全国のほぼすべての大学が、朝鮮高級学校の卒業生に対し、「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」として大学受験資格を認定している。
(2) また、他の外国人学校に通う子どもの多くは、親の仕事等の都合上一時的に我が国に身を置き、外国人学校を卒業したのち、本国の大学へ進学することが予定されているのに対し、朝鮮高級学校に通う子どもは、ほとんどがいわゆる在日朝鮮籍・韓国籍の子どもたちであり、将来にわたって日本国内で生活することが予定されていることからすれば、可能な限り日本国籍の子どもたちと同等の人権が保障されるべきであり、民族教育を希望する保護者・子どもたちの意思を尊重すべきであることからしても、その支援の必要性は、他の外国人学校に通う子どもに比し、優るとも劣るものではない。
(3) そもそも、本件省令が、高校無償化法の対象となる外国人学校につき、「高等学校に対応する外国の学校の課程と同等の課程を有するものとして当該外国の学校教育制度において位置付けられたもの」とのカテゴリーを設定したこと自体、実際上、国内に存在する外国人学校のうち、本国である北朝鮮と国交のない朝鮮高級学校のみを別異に取り扱うことを念頭に置いているものとも疑われ、その合理性には疑問がある。
(4) 以上によれば、朝鮮高級学校については、他の外国人学校と等しく、「高等学校の課程に類する課程を置くもの」として高校無償化法を適用すべきであり、他の外国人学校は全て高校無償化制度の対象としたにもかかわらず、朝鮮高級学校のみを対象から当面除外していることは適切ではなく、仮に、朝鮮高級学校を本件省令1条1項ハにも該当しないとして除外した場合には、朝鮮高級学校に通う子どもに対する合理的理由のない差別にあたるおそれが高い。
4 なお、政府は、朝鮮高級学校を指定するか否かについては、委員名及び議事内容を非公開とした専門家会議により決するとしているが、朝鮮高級学校のみを別異に取り扱うことの合理的理由の有無の判断にあたっては、文部科学省の意思決定につき国民をして検証可能とすべく、意思決定の過程を公開することが不可欠の前提であり、現在どのような議論がなされているかについて国民が検証できるよう公開されるべきである。
5 ところで、新潟県においては、北朝鮮による拉致被害事件が発生した過去があり、かかる重大な人権侵害行為は到底許されないものであり、問題の早期解決を強く望むものである。そして、閣僚や政治的な影響力のある者の中には、拉致被害事件の未解決を理由として、朝鮮高級学校に無償化法を適用すべきではないとする意見が散見される。しかしながら、朝鮮高級学校に通っている子どもやその親は、拉致事件につき責任を負うべき立場にはなく、拉致事件を原因とする差別を受けるいわれもない。拉致事件が未解決であるという事実があるとしても、それによって朝鮮高級学校に通う子ども及びその親に対する差別を是認する理由にはならないことは明らかである。
6 よって、当会は、内閣総理大臣および文部科学大臣に対し、朝鮮高級学校を就学支援金の支給対象から除外することなく、高校無償化法2条1項5号の適用を認めるよう求めるものである

2010(平成22)年8月3日
新潟県弁護士会
会長 遠藤 達雄

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