声明・意見書
2007年08月7日|声明・意見書
取調べの全過程の録音・録画を求める会長声明
日本の刑事司法においては、戦前から捜査過程において過酷な取調べが行われてきた。
そのことに対する反省を踏まえ、戦後、制定・施行された日本国憲法は、黙秘権を保障し、拷問を禁止した。しかし、現実には、密室の取調室の中で、過酷な取調べが行われ続け、冤罪が生み出されてきた。そのような状況を踏まえ、弁護士会は取調べの可視化を求めてきた。また、イギリスやアメリカのかなりの州のほか、オーストラリア、韓国、香港、台湾、モンゴルなどでも、取調べの録画・録音を義務付ける改革が既に行われている。しかし、日本においては、未だに取調べ全過程の可視化は実現されていないものである。
今でも、密室での取調べが行き過ぎた取調べを生み、自白強要、ひいては冤罪を生む危険性を有していることは、いわゆる志布志事件に関する無罪判決(鹿児島地裁2007年2月23日判決)が示しているところである。無辜を処罰することは人権侵害の最たるものであり、私たちは決して冤罪を許容することはできない。
また、2009年(平成21年)5月までには裁判員裁判が開始することとなっているところ、取調べの経験がない裁判員が、取調べ過程を録音・録画したテ-プなどに接することなく、密室で行われた取調べの過程、すなわち自白の任意性・信用性について適切な認定をすることは困難であるし、裁判員が参加する訴訟において犯罪があったかどうかではなく、取調べがどのようなものであったかについて延々と審理を行うのでは裁判員に過剰な負担をかけることになる。
以上より、取調べ全過程を録音・録画し、取調べ過程を可視化することは、被疑者・被告人の人権を守り裁判員裁判を円滑・適切に実施するために不可欠である。
そこで、当会としては、立件された全被疑事件につき、取調べ全過程を録音・録画することを強く求めるものである。また、当会としては、本年9月8日開催予定の「なくそう、えん罪!市民集会」等の活動を通じ、取調べ全過程の録音・録画を求めるために全力を尽くす決意を改めて表明するものである。
以上
平成19年8月7日
新潟県弁護士会会長 藤田 善六
新潟県弁護士会
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