新潟県弁護士会 – 弁護士会

声明・意見書

2020年08月5日|声明・意見書

犯罪被害者条例に対する意見書

第1 はじめに
 新潟県は本年度末までに犯罪被害者及びそのご家族又はご遺族(以下「犯罪被害
者等」という。)の支援に特化した内容の「新潟県犯罪被害者等支援条例」を新た
に制定することを目標に,現在「新潟県犯罪被害者等支援条例」骨子素案(以下
「骨子素案」という。)を公表し,広く県民意見の募集を行っておられます。
 公表された骨子素案では,県が他の機関との連携強化や情報共有等のために必要
な体制の整備を行うことや(骨子素案第10),犯罪被害者等が犯罪被害により心
身に受けた影響から回復できるように適切な保健医療や福祉サービスの提供を行う
等の内容が規定されており(骨子素案第14),法律家団体として犯罪被害者等支
援に携わってきた当会としても,このような規定を含む県条例が制定されることは
大変有意義なことであると考えております。
 誰しもが,ある日突然犯罪被害に遭い,健康な体と心を奪われ,命を失う犯罪被
害者等となることがあります。その結果,日常生活もままならなくなり,仕事がで
きなくなったり,それまで住んでいた家に住めなくなったり,家庭生活ができなく
なることもありますし,経済的に困窮することも多くあります。また,新たに医療
費や弁護士費用等の経済的負担をせざるを得なくなる場面も出てきます。このよう
な困難に直面する犯罪被害者等にとって特に必要な支援は,直接的な経済的支援及
び日常生活支援だと考えられます。
また,県条例が制定された後,それに基づく施策が条例の目的(骨子素案第1)
の達成に向かって適切に策定,実施されていくようにするための制度が設けられて
いることも必要であると考えられます。
 そして,条例制定後の具体的な犯罪被害者等支援の場面においては,県だけでな
く市町村の支援活動及びそれに対する県の協力が重要になってくると考えられます。
 当会は,以上のような観点から,県条例に以下の内容を盛り込むか,あるいは同
条例に基づく「犯罪被害者等支援に関する計画」(骨子素案第9)において以下の
内容が規定されるべきであると考えます。

第2 条例骨子素案の具体的内容に関する意見
1 経済的支援(骨子素案第19関係)
  前記の理由から,犯罪被害者等に対し一定額の給付金を支給する旨の規定が是
 非とも必要と考えます。骨子素案には犯罪被害者等の「経済的負担の軽減」が掲
 げられていますが(骨子素案第19),もう一歩踏み込んだ規定としていただき
 たい。
  犯罪被害者等になって心身に傷を負うことにより,それまでのようには仕事が
 できなくなり収入が減ることが多いだけでなく,それまで住んでいた所に住めな
 くなり引っ越しを余儀なくされたり,報道機関やメディア関係者からの取材対象
 となり弁護士に対応を依頼するなどして急な経済的支出をせざるを得なくなるこ
 ともあります。
  このような犯罪被害者等に対しては使途を定めずに利用できる,一定額の給付
 金を支給して支援する必要があると考えられます。
  これについて財政面での懸念があるようでしたら,給付の回数(例えば,被害
 直後に1回等),給付の対象(一定の重大犯罪による被害に限る等)に限定を付
 すること等によりある程度の歯止めをかけることも検討されてよいと思われます。
  また,犯罪被害者等が専門家による助力を安心して得られるようにするため,
 弁護士による法律相談費用や臨床心理士等によるカウンセリング費用を公的に負
 担することについても規定されるべきものと考えます。

2 損害賠償請求についての支援
  犯罪被害者等基本法第12条は,国や地方公共団体が犯罪被害者等の加害者に
 対する損害賠償請求についての援助等を行う旨規定しています。これを踏まえて,
 平成31年以降に条例が施行された和歌山,福岡,三重においては,いずれも損
 害賠償請求についての支援の規定が条例に盛り込まれています。しかし,骨子素
 案にはこれに関する規定がありません。
  犯罪被害者等が生活の再構築を図るうえで,犯罪によって蒙った経済的な損失
 を回復することは極めて重要なことです。また,犯罪被害者等が損害賠償に関し
 て 加害者に立ち向かう上で,それを支援する規定が地方公共団体の条例にある
 ことは, 心理的にも大きな支えになるはずです。
  したがって,新潟県の条例においても上記3県と同様の規定を設けるべきもの
 と考えます。

3 当事者である犯罪被害者等の関与の明記等(骨子素案第9,第12関係)
  骨子素案には,犯罪被害者等支援に関する計画(基本方針,施策及び支援を推
 進するために必要な事項を内容とする)を定めたり変更したりするに当たって県
 民の意見を聴くこと(骨子素案第9),支援に関する施策に犯罪被害者等の意見
 を反映させるため,必要な措置を講ずること(骨子素案第12)が定められてい
 ます。しかし,これらの規定には不十分な点があります。
  まず,骨子素案第12では,犯罪被害者等の意見を反映させるために必要な措
 置を講ずることとされている対象が「施策」に限定されています。骨子素案第9
 に定められているとおり,「計画」の内容には「基本方針」「施策」「支援を推
 進するために必要な事項」の3つの事項が含まれており,それらの決定や変更に
 当たっては県民の意見を聴くべきものとされているにもかかわらず,骨子素案第
 12では,犯罪被害者等の意見を反映させるために必要な措置を講ずることとさ
 れている対象が「施策」だけに限定されていて,「基本方針」及び「支援を推進
 するために必要な事項」の2つがその対象から除外されているのは不合理である
 と考えられます。犯罪被害者等支援に関する計画の全領域を対象として,犯罪被
 害者等の意見を反映させることを可能にする規定にする必要があります。
  次に,犯罪被害者等支援に関する計画の決定や変更に犯罪被害者等の意見を反
 映させるための制度が定められていません。しかし,犯罪被害者支援の施策,支
 援に関する計画の策定や推進,施策の実施状況のモニタリングや検証,それに基
 づく計画の見直しや変更等が適切に行われるためには,それらについて調査審議
 する会議体等を設置し,その構成員に犯罪被害者等らを入れることにより,犯罪
 被害者等の意見がその調査審議に反映されるようにすることが必要ですので,そ
 のような会議体等の設置を条例に定めるべきであると考えます。骨子素案第12
 には「県は,犯罪被害者等支援に関する施策に犯罪被害者等の意見を反映させる
 ため,必要な措置を講ずるものとします。」と定められていますので,骨子素案
 は,そのような具体的制度は「犯罪被害者等支援に関する計画」の中に定めるこ
 とで足りるとの考え方に立って立案されているのかもしれません。しかし,犯罪
 被害者等支援の内容を実効性あるものにしていくうえで,当事者である犯罪被害
 者等がその決定や変更に関与することは不可欠であり,そのような制度は条例に
 明記することが必要であると考えます。

4 市町村の役割の明記(骨子素案第5関係)
  骨子素案には,県の責務,県民の責務,事業者の責務,民間支援団体の責務が
 定められていますが(骨子素案第4,第6,第7,第8),市町村の責務は定め
 られておらず,市町村による犯罪被害者等支援に関する施策の策定,実施に必要
 な情報の提供,助言等の協力を県が行うことが定められているのみです(骨子素
 案第5)。これは,県と市町村はともに地方公共団体として対等の立場にあるこ
 とを考慮されたものと推察します。
  しかし,犯罪被害者等基本法第4条は,地方公共団体が犯罪被害者等支援に関
 し地域の実情に応じた施策を策定,実施する責務を有することを定めていますの
 で,市町村にも県と同様に犯罪被害者等支援に関する責務があります。
  県は広域の地方公共団体であるのに対し,市町村は基礎的な地方公共団体です
 ので,住民の生活に密着した市民サービスを提供できるのは市町村です。このた
 め,具体的な犯罪被害者等支援の場面においては県だけでなく市町村の支援活動
 も重要になります。ところが,骨子素案には市町村の責務や役割に関する規定が
 存在しないため,市町村が主体的に果たすべき役割の重要性が見えてきません。
  他方で,市町村の規模は多様であり,必要とされる犯罪被害者等支援活動を実
 施するためには県の協力が不可欠となる場合があると考えられます。
  以上のことから,県条例には犯罪被害者等支援に関して市町村が主体的に果た
 す役割を規定したうえで,市町村と県との間の協力に関する規定を設けることが
 有意義であると考えます。そのために,骨子素案第5の表題を「市町村への協力」
 から「市町村の役割等」と改め,その内容を次のようなものに変更していただき
 たいと考えます(大分県犯罪被害者等支援条例第8条に同様の規定があります)。
 「○ 市町村は,地域の状況に応じた犯罪被害者等の支援に関する施策を策定し,
   及び実施するとともに,県が実施する犯罪被害者等の支援に関する施策に協
   力するよう努めるものとします。
  ○ 県は,市町村が犯罪被害者の支援を行うために必要な情報の提供及び助言
   その他の協力を行うものとします。」

第3 結語
 これまで新潟県内の地方公共団体において,犯罪被害者等の支援に特化した条例
が制定されたことはありません。今回県が条例制定に踏み出されたことは,それ自
体として大変有意義なことです。更に,県条例の制定は,最も住民に身近な地方公
共団体である市町村においても同様の条例制定の動きが広がる契機になる可能性が
あり,その点においても大きな意義を有しています。
 当会は,県内の犯罪被害者等支援の機運をさらに盛り上げ,より一層犯罪被害者
等にとって有益な内容のものとするべく,新潟県犯罪被害者等支援条例に上記の内
容を盛り込まれるよう意見を申し上げる次第です。

                     本件に関するお問い合わせ先
                           新潟県弁護士会事務局
                          025-222-5533

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