新潟県弁護士会

声明・意見書

2011年07月30日|声明・意見書

「米百俵」の精神を受け継いで -法曹養成制度における給費制の意義を考える-

宣    言

司法権の根幹にある「法の支配」は、他の二権の多数意思による人権侵害をチェックするために、現行憲法により司法権に付与された違憲法令審査権を背景としている。
法の支配を担うのは、法曹である裁判官、検察官及び弁護士である。将来の法曹にふさわしい人材を養成する法曹養成制度のありようは、それ自体、司法権の独立性のみならず司法権の機能にも深く関わっているというべきである。

司法修習制度は、統一、公平、平等の理念のもと、昭和22年、戦後の疲弊、困窮による混乱期に誕生した。当初から司法修習生には給与が支給されてきた。
給費制について、当時の法制局は、裁判官や検察官と同じように、弁護士も国家事務を行うものである、弁護士になるには司法修習生を必ず経なければならないものであるから給与を支給する旨説明し、以来、64年に亘り、司法修習制度における給費制は維持されてきた。
この、「弁護士も国家事務を行うものである」との認識は、弁護士は民間でありながら司法権の機能に深く関わり、裁判官や検察官と同等に公益的立場にあることを端的に示すとともに、司法を担うにふさわしい法曹養成は国家の責任と負担によっておこなうべきであるとの意思を明確に示したものというべきである。

「法曹養成に関するフォーラム」は、昨年11月26日の裁判所法改正の際になされた以下の衆議院の附帯決議を実施するために本年5月13日に設置された。
政府及び最高裁判所は、裁判所法の一部を改正する法律の施行に当たり、次の事項
について格段の配慮をすべきである。
一 改正後の裁判所法附則第四項に規定する日までに、個々の司法修習終了者の経済的な状況等を勘案した措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
二 法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること。
右決議する。

給費制は、法曹養成制度を経済的側面から支える重要な柱であり、その採否如何によっては、その制度趣旨の根本的変更を伴うものというべきである。
ところが、フォーラムでは、第3回目の7月13日に、貸与制を前提として議論をするとの方向でとりまとめがなされた。回答率14%にも満たない弁護士の所得調査のデータが提出されるなどして、貸与金の返済は可能との認識に至ったため、とされている。
このようなデータ等を根拠にしたとりまとめをすること自体に大きな問題があるというべ
きである。また、検討の順序やあり方を示した、同附帯決議二の、「法曹養成の在り方全体について検討し、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずる」という文言にも反するというべきである。
少なくとも、法曹養成制度全体の在り方という制度の根本に関わる議論をした後、他の制度との兼ね合いの中で、給費制の是非を問い、議論を経た上でとりまとめがなされるべきであろう。
その際、給費制導入について、弁護士の公益的立場を前提とした司法修習制度発足当時の法制局の説明を転換すべき必要性の有無を検証することが必要である。
今般の、貸与金の返済可能性のみに焦点を当てた座長の取りまとめは、法曹養成制度のありようを検討する立場にある機関として、拙速且つ不充分であるとの批判を免れないというべきである。

明治3年(1870)5月、戊辰戦争に敗れ疲弊し困窮する長岡藩(現長岡市)の士族には、日に三度の粥(かゆ)すらすすることのできない者もいたという。この窮状を見るに見かねた支藩の三根山藩(現新潟市巻町)の士族たちは、見舞いとして米百俵を贈った。
長岡藩の大参事小林虎三郎は、米の分配を求める士族たちを前に、将来の長岡の発展は人にある、米は人材養成のために学校の建設資金にしようと提案して説得し、米百俵を売却して国漢学校を建て、今日の長岡発展の礎をつくった。
これがいわゆる「米百俵」の故事であり、危急存亡のときにこそ将来を見据えた先見を持つべきこと、それが今を生きる人間の務めであることを教えている。

現在、将来の司法を担おうと希望する若者たちが激減している。
私たちは、これが、有為な人材の司法離れと、それによる法曹養成制度の弱体化を招きかねず、将来的に司法権の機能低下につながりかねない、という危惧を共有した。
私たちは、この「米百俵」の精神に学び、震災復興の中にあっても、先人が持ち合わせた先見の明を持ち続けたいと考える。
私たちは、司法修習生の給費制が、法曹養成制度の根幹として、将来においても維持存続されるべきであること、それが米百俵の精神を受け継ぐ私たちの先見であることを確認するとともに、フォーラムに対し、現下における法曹養成制度の矛盾やゆがみ並びにその根本的な是正について徹底した議論を行ったうえで、再度、給費制の是非について検討するよう求める。
以上宣言する。

平成23(2011)年7月30日

市民集会
「米百俵」の精神を受け継いで
-法曹養成制度における給費制の意義を考える-
主催 新潟県弁護士会  共催 日本弁護士連合会・関東弁護士会連合会

サイト内を検索する

連絡先・交通アクセス

新潟県弁護士会 新潟相談所

新潟県弁護士会

〒951-8126
新潟県新潟市中央区学校町通1番町1番地
TEL.025-222-5533TEL.025-222-5533詳しい情報を見る

交通アクセス

バス:新潟駅万代口から中央循環線バス乗車、市役所前下車。バス停より300m。
車:新潟駅から約10分。

  • 弁護士を講師として呼ぼう!弁護士派遣制度
  • ひまわり基金運営委員会 人権賞
  • 子どもの悩みごと相談 毎週月・木 16〜19時
  • 中小企業の法律相談はひまわりほっとダイヤルへ
  • twitter @mamorun2014
  • ひまわりお悩み110番 0570-783-110
  • ストップ、えん罪!
  • 司法修習生の方へ
  • 東口日本大震災の被災者の皆様へ
  • 新潟県弁護士会住宅紛争審査会
  • 日本司法支援センター 法テラス
  • 公益財団法人 日弁連法務研究財団
  • 関東弁護士会連合会
  • 2016年1月16日 防災シンポジウム 動画によるご紹介
  • 2016年1月16日 防災シンポジウムご報告
  • 弁護士になろう!
スマホ・パソコンからの
相談予約はこちら