新潟県弁護士会

声明・意見書

2012年02月27日|声明・意見書

東日本大震災及び福島原発事故による広域避難者支援及び特別立法制定に関する決議

第1 決議の趣旨
昨年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴って発生した東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)福島原子力発電所における事故(以下「福島原発事故」という。)からもうすぐ一年となる。福島、宮城、岩手の3県から避難されてきた方々は、当県において現在も7000名を越え(新潟県平成24年2月3日発表)、上記3県の自県外に避難者された方々の総計はおよそ7万人に及ぶ(東日本大震災復興対策本部平成24年1月18日発表)。まさに、かつてない規模で、極めて広範な地域に避難されている。これらの方々は先の見えない不安のなかで、日々の暮らしを支えていく懸命な努力を続けておられる。
避難が長期に及ぶなかで、東京電力、国、自治体、弁護士会並びに民間組織は、広域に避難された方々の実情とその声に耳を傾け、寄り添う努力を続け、必要な支援を行っていく必要がある。
当会は、昨年の5月総会において、福島原発事故の避難者に対し、適切な損害賠償を実現する前提として、避難者自身の声を聞くことを求めた(原子力発電所事故被災者の「生の声」を踏まえた適切な損害賠償の実現及び真の被害回復実現を求める総会決議)。原子力損害賠償紛争審査会は昨年10月になってようやく自主避難者の声を聞いたものの、未だ不十分である。
当会は東日本大震災及び福島原発事故による広域避難者の方々への支援活動を通じて、これら広域避難者に対する支援のあり方について、東京電力、国、各自治体及び関係諸機関に対し、下記の諸点を強く要望する。

1 避難者における情報格差解消のためのシステム化とネットワーク支援を行うこと
2 避難対象区域にとらわれない完全な賠償を実現すること
3 長期的な生活支援と健康診断などの医療支援を充実させること
4 総合施策実現のための広域避難者救済特別立法を制定すること

第2 決議の理由
1 避難者における情報格差解消のためのシステム化とネットワーク支援
避難を余儀なくされている方々は、従来の生活空間や人間関係から切り離され、出身市町村からの情報も十分に得られないまま、不安と孤立のなかで日々を過ごしている。特にこれが長期に及ぶ場合、三宅島被災の教訓からしても、同じ郷里の避難者がお互いに連絡をとりあい、また被災地情報・支援情報の提供を受けることが極めて重要である。
にもかかわらず、各避難者の居住場所や出身市町村などの情報が個人情報保護を理由に十分な開示が受けられない状態にある。このことは広域に及ぶ県外避難者の孤立を進行させている。全国避難者情報登録システムも、あくまでも自己申告制であるためにシステムを知らないことによる登録漏れが生じている。各市町村の連携による自動的な登録システムが必要である。
この点、新潟県三条市が作成し実行した災害時要援護者名簿のシステムはおおいに参考とされるべきであり、これを今回の広域避難者に即した形で、恒常的な制度としてシステム化すべきである。すなわち、広域避難者は基本的に本人の不同意(拒絶の意思表示)がない限りは、居住場所の自治体において、出身市町村等の基本情報を登録され、必要とされる被災地情報・支援情報について、定期的継続的にそして費用の負担なく自動的に受けられるようにすべきである。このことを全国における各市町村が連携し、実施する必要がある。
そのうえで、それぞれの避難者の方々の孤立化を防ぐために、近隣に避難している者同士が意見交換や日常交流をするためのネットワークづくりが必要であり、新潟市をはじめ、その動きは進行しつつある。官民挙げてその支援が求められている。
当会としても、これからも法律相談活動をはじめとする支援活動を継続し、より一層努力することを誓う。

2 避難対象区域にとらわれない完全な賠償の実現
震災後、失われたものは無数にある。一人一人にとって「かけがえのない人生」そのものが狂わされたことはあまりに大きい。その意味において、福島原発事故の責任は極めて重い。
にもかかわらず、国及び東京電力は不法行為としての損害賠償責任すら十分に果たしているとは言い難い。
当会は「適切な損害賠償と被害回復の実現」を求め続けているが、原子力損害賠償紛争審査会は、ようやく、いわゆる避難指定区域外の住民についても避難の有無にとらわれず、地域などを指定して賠償を認める方向性を示しつつある。しかし、対象地域及び賠償額など十分ではなく、区域外避難者の方々への損害賠償が実現するまで不安定な状態が継続している。放射能に対する住民の不安は当然であり、これを回避するために避難することは、健康を守る権利であり、幸福追求権としての人権である。このことを認めた上で、広く損害賠償を行うことこそ賠償の基本である。今こそ、国と東京電力は、一人も漏らすことなく、完全な賠償のために努力すべきである。
さらに、当会が以前から求めているように、損害賠償の和解仲介機関である「原子力損害賠償紛争解決センター」はその事務所を福島県と東京都のみならず全国各地に設けるべきである。原子力損害の賠償手続において費用負担を被害者である広域避難者の方々に強いることは許されない。早急な対応を強く求める。
さらに、広域避難者を含む被災者の方々が、法的支援を受けることができるようにするため、民事法律扶助制度について、災害時の特例的措置の創設を進め、対象者及び対象事件の範囲拡大、償還猶予・免除を原則とするなどの改善をすべきである。

3 長期的な生活支援と健康診断などの医療支援の充実
避難が長期に及ぶことは、避難者の生活を悪化させかねない。とりわけ、原子力事故による放射性物質の飛散による被害は長期化を免れない。
その場合に、避難者の方々に必要なことは、生活支援と医療支援である。
福岡県が実施した臨時職員の採用など、避難者への雇用機会の積極的な提供や職業訓練が極めて重要であり、国や各自治体、民間組織がこの点への取組を強める必要がある。
そもそも、原子力被害による除染の取組がようやく開始された現段階では、帰還することがいつになるのか、そうした議論がいつからできるようになるのかも不明である。希望する方々の避難場所における定住や就労についての生活支援についても、国や自治体は正面から検討すべきである。
さらに、福島原発事故に伴う放射線による晩発性障がいの発生が懸念されている。低線量被曝が相当長期間を経過した後に人間にどのような影響を与えるのか、現在においても明確な知見はない。
したがって、国及び自治体は、長期の健康調査を継続し、健康管理と健康被害への補償を適切に行わなければならない。かつて、行政が健康調査を怠り、徹底した被害救済が行われなかった水俣病被害に例をとるまでもなく、健康調査を基軸にした医療支援は欠かせない。とりわけ、乳幼児、児童、妊婦という放射線被害を受けやすい人々の健康調査は優先的にまた徹底して行われなければならない。その調査結果の情報開示も不可欠である。

4 総合施策実現のための広域避難者救済特別立法の制定
東日本大震災は、地震による天災である。しかし、天災を受けた人々が社会にどのように受容されるのかは、その社会の成熟度によるのであり、人権保障の問題である。まして、福島原発事故は人災であり、その救済は国及び東京電力の責任である。
そうした観点から言えば、日本全国の広域に避難された方々を各自治体や民間団体が自主的に支援するのみでは足りない。自助・共助の精神から公助の段階に来ている。まさに、国連が定義する「国内避難民」にあたる広域避難者の方々に対する人権保障は、現行憲法制定後、初めての事態と言っても過言ではない。
これまで指摘した、広域避難者の方々の居住場所における自動登録と情報提供の充実、原子力損害の完全な賠償、そして広域避難者の方々への生活支援と医療支援などのいずれをとっても、単独の施策というよりも、総合的に展開する必要があり、広域避難者の方々のあらゆるニーズに即して展開される必要がある。
そのためには、国及び自治体がすべての避難者の把握と生活調査を早急に実施し、その結果に基づく政策プログラムの提案が不可欠である。
そうした広域避難者の方々に対する総合的支援のための特別立法を一刻も早く制定すべきである。

以上のとおり、新潟県弁護士会総会において決議する。

2012年(平成24年)2月24日
新潟県弁護士会
会長 砂田徹也

サイト内を検索する

連絡先・交通アクセス

新潟県弁護士会 新潟相談所

新潟県弁護士会

〒951-8126
新潟県新潟市中央区学校町通1番町1番地
TEL.025-222-5533TEL.025-222-5533詳しい情報を見る

交通アクセス

バス:新潟駅万代口から中央循環線バス乗車、市役所前下車。バス停より300m。
車:新潟駅から約10分。

  • 弁護士を講師として呼ぼう!弁護士派遣制度
  • ひまわり基金運営委員会 人権賞
  • 子どもの悩みごと相談 毎週月・木 16〜19時
  • 中小企業の法律相談はひまわりほっとダイヤルへ
  • twitter @mamorun2014
  • ひまわりお悩み110番 0570-783-110
  • ストップ、えん罪!
  • 司法修習生の方へ
  • 東口日本大震災の被災者の皆様へ
  • 新潟県弁護士会住宅紛争審査会
  • 日本司法支援センター 法テラス
  • 公益財団法人 日弁連法務研究財団
  • 関東弁護士会連合会
  • 2016年1月16日 防災シンポジウム 動画によるご紹介
  • 2016年1月16日 防災シンポジウムご報告
  • 弁護士になろう!
スマホ・パソコンからの
相談予約はこちら