新潟県弁護士会

声明・意見書

2012年09月4日|声明・意見書

自殺防止への取り組みについて、新潟県弁護士会としてあらためて最大限の努力を注いで具体的に行動することを宣言する旨の総会決議

決議の趣旨
1 新潟県弁護士会は、新潟県民をはじめとする国民の自殺の発生を防止するために、最大限の努力を傾注して、以下のような具体的行動を行う。
(1)  国、地方公共団体、NPO法人、医師会、薬剤師会、社会福祉団体、社会福祉協議会、社会福祉士会及びその他の諸団体・関係機関等と連携して自殺防止ネットワークの形成に積極的に関与してその一翼を担い、自殺を選択するかどうか悩んでいる人が相談できるための常設的な体制の維持・構築に努める。
(2)  前記のネットワークを基盤として、特に法律的紛争などに基づく問題解決の手段を見つけることができないがゆえに起こってしまう自殺を防止するために、専門弁護士の育成や派遣等の支援体制を確立し、これを発展させながら運用する。
(3)  会員を対象とする自殺防止を主要なテーマとする研修会を行い、自殺防止のための知識の涵養に努め、多数の自殺防止ゲートキーパーたりうる弁護士を育成するとともに、弁護士が業務活動を通じて他者の心理に生ずる被害の加害者にもなりうるという事実に対しても虚心に目を向け、弁護士による事件関係者への無用な心理的ハラスメントの発生の防止に努める。
2 新潟県弁護士会は、国、新潟県、新潟市及び県内の各地方公共団体に対し、自殺防止のために、いっそうの熱意ある取り組みを継続するよう求める。
3 新潟県弁護士会は、日本国民に対し、個人の尊厳と、国民一人ひとりが幸福追求権の主体であることをあらためて想起するよう呼びかけるとともに、生き続けることそれ自体に根源的な価値があることと、幸福な人生を送るためには他者とのことばを通じた心の交流に重要な意味があるとの理念を提言し、その価値と理念の実践のために、会として粘り強く取り組んでいくことを宣言する。

決議の理由
1 警察庁の統計によれば、日本国内の自殺者は、1998年以降2011年まで14年連続で年間3万人を超えてきた。2012年は減少傾向にあり3万人を下回る可能性があるとはいうものの、なお人数的に高水準で推移している。新潟県は、人口当たり自殺率で常に全国平均を大きく上回る数値で推移しており、憂慮すべき事態が継続している。
2 日本国憲法は、「すべて国民は、個人として尊重される。」「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、……最大の尊重を必要とする」として、人がその人らしく生きることを最大限に保障している。その前提として、多様な人々がいて多様な価値観があり、それらは相互に尊重されるべきとの考えが措定されている。この、憲法第13条に示された価値観こそが国家の存立目的であり、政治・経済・社会の在り方を規律すべき行動目標であることは、自明のことである。
毎年多くの国民が自殺していくということは、それに倍するほどの多くの国民が自ら生命を断つかどうかという深刻な問題で悩み、そのうちの一定の数の人達が死という選択を余儀なくされているということである。個人の尊重、幸福追求権の尊重という大義が、広く、深く、危殆にさらされているということを意味する。
3 こうした事態は、弁護士・弁護士会にとっては、その職業的アイデンティティに関わるものである。弁護士法1条によれば、弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現をめざすべきものとされているが、それは、言葉を換えれば「個人尊重主義社会の実質的実現」であり、それが危殆にさらされているということは、弁護士にとっての永遠の課題が危機にあるということを意味するからである。この事態は、弁護士・弁護士会にとっては、放置することのできないものというべきである。
4 新潟県弁護士会(以下「当会」という。)は、2010年3月20日に「自殺問題を考える県民フォーラム」を主催し、そこで「死ななくてもいい社会をめざす宣言」を採択して当会としての決意を表明した。
当会は、その後今日に至るまで自殺防止のための尽力を継続してきたところであり、当会として上記宣言で示した決意に恥じないだけの活動を展開し、自殺防止に努めてきたものと自負しているところである。しかし、他方で、弁護士会としてのこれまでの活動の在り方や関係機関、諸団体との連携の在り方が十分なものであったのかどうか、その活動が悩んでいる国民にとって本当に身近で気軽にアクセスしやすいものであったのかどうか、熱意が空回りしていなかったかどうか、旧来的な窓口開設待機型の活動の域から脱し得ていたかどうかといったことについて、当会としての活動の在り方を冷静に振り返ったうえで真剣に反省し、市民目線で活動を見直すべき時期に来ていると考えている。
5 当会では、活動の在り方をより実行あらしめるために関係機関や諸団体との連携をより充実させ、各団体・個人の力を集約して、悩んでいる人がより気軽に、自分の悩みの内容に即応した実のある相談ができる体制を構築する。この連携は「自殺防止ネットワーク」を形成することとなる。当会は上記ネットワークの形成に対し、諸団体を結ぶ結合剤の役割を果たしつつ積極的に関与し、かつ一つの環としてその一翼を担う。その重要な目的は、自殺を選択するかどうか悩んでいる人が気軽に、かつ適切に相談できるための常設的な体制の維持・構築にある。
6 当会が関わる自殺防止活動は、上記ネットワークを中心に展開することとなるが、特に法律的紛争などに基づく問題解決の手段を見つけることができないがゆえに起こってしまう自殺を防止することは、法律の専門家団体である弁護士会の重要な責務であるから、会としてはこれに積極的にコミットしていきたい。その際、弁護士が弁護士であるというだけで果たしうる役割もあるが、自殺防止のための研修を受け、自殺を考えている人に対する相談技法や対応のための知識を習得した弁護士であれば、より一層意義のある役割を果たしうるはずである。そのことを考慮し、当会では、今後、研修や講演会、経験交流会などを通じて、自殺防止のための能力のある専門弁護士の育成を図り、自殺防止のゲートキーパーたりうる弁護士を一人でも多く育てて行くように努める。また、こうした相談活動を行うことが、弁護士にとって経済的に見合うものではなく、負担となる可能性が在ることを考慮し、弁護士派遣等に際して支援体制を確立し、これを発展させながら運用する。
7 他方、弁護士が、業務活動を通じて他者の心理に生ずる被害の加害者にもなりうるという事実に対しても虚心に目を向けたいと考えている。弁護士は、業務活動に当たって依頼者の言い分を代弁し、社会的正義を貫徹しようとすることを職業的使命とする。そこで、弁護士自身が対立当事者に対して心理的負荷をかける当事者(加害者)になりかねないという、諸刃の剣というべき問題がある。そのことは、弁護士にとっては必然的な、いわば職業的宿業とでもいうべきものであるかもしれない。しかし、そうであるからといって、弁護士が、不用意に他者を傷つけてよいということにはならない。
当会では、弁護士が職務遂行を通じて他者の心理に生ずる被害の加害者にもなりうるという事実に対しても虚心に目を向け、当会会員に対する啓発を行うとともに、研修会を開催して当会会員による事件関係者への無用な心理的ハラスメントの発生の防止に努める。
8 当会は、国、新潟県、新潟市及び県内の各地方公共団体に対し、自殺防止のために、よりいっそうの熱意ある取り組みを継続するよう求める。
これら関係各機関がこれまで自殺防止について真剣に取り組み、徐々にとはいいながら相応の成果をあげてきたことは否定すべくもないところである。そして、今後、たとえば、自殺率減少といった目に見えた成果が表れてくる可能性は高い。しかし、そうなったとしても、それは、直ちに国・地方公共団体としての取り組みの不要化や、自殺防止事業を終焉すべき時期の到来を意味するものではないということに留意すべきである。国や地方公共団体は、成果の好悪に一喜一憂するのではなく、倦まず弛まず共に努力し、貧困問題の解消などを含めて相応の予算措置を取り、人的資源を育成・確保しながら住みよい国を作ることに努め続けて行くべきである。
9 幸福な人生を送るためには、他者との心の交流に重要な意味がある。私たち弁護士にとっては、悩む人たちのお話をお聞きし、心と心を通わせることにその職業的立脚点がある。その主要な手段は「ことば」である。自殺防止の問題もまた、ことばとことばを交わすことから解決の道のりが始まると考えられる。新潟県弁護士会では、ヒューマンライツプロジェクトを展開し、その一環として、2010(平成22)年度から「ことばとことば―いのちのキャンペーン」を継続しているが、そのキャッチコピーは以下のように書かれている。
【「ことば」で救える「いのち」がある。あなたのために力になる「人」がいる。伝えることは未来へ歩むこと。その抱えている悩み、まずは「ことば」にしてみませんか?新潟県弁護士会では各関係機関と連携しながら、さまざまな悩み、トラブルの解決をサポートします。】
新潟県弁護士会は、ここに、あらためて言葉を通じた心の交流が幸福な人生を生み出す重要なキーになるとの理念を提言する。
10 当会は、上記に示した価値と理念の実践のために、会として粘り強く取り組んでいくことをここに宣言する。

2012年(平成24年)8月31日
新潟県弁護士会 臨時総会決議

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