新潟県弁護士会 – 弁護士会

声明・意見書

2012年11月30日|声明・意見書

原発事故避難者に寄り添う支援をさらに続けていくことを宣言する旨の総会決議

第1 決議の趣旨
1 新潟県弁護士会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下、「原発事故」という。)における警戒区域等の居住制限区域を生活の本拠としており、原発事故を機縁として避難した者(以下、「区域内避難者」という。)及び居住制限区域以外の地域を生活の本拠としていた者であって、原発事故後、放射線による汚染リスクがそれ以前の生活本拠地に比べてより少ないと認められる地域へ避難した者(以下「区域外避難者」という。)に寄り添う支援をさらに続けていくために、以下のような具体的活動を行う。
(1)区域内避難者及び区域外避難者(以下、「避難者」という。)に対し、その東京電力株式会社(以下、「東京電力」という。)に対する損害賠償請求について、必要と考えられる正確な知識、情報を提供すべく、法律相談及び広報に努める。
(2)国、地方公共団体、NPO、避難者交流拠点関係者及びその他の諸団体・関係機関等と連携して、避難者支援ネットワークの形成に積極的に関与してその一翼を担い、支援を必要とする避難者が容易に適切な支援主体(以下「支援者」という。)にたどり着ける体制の構築に努める。
(3)「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」(以下、「子ども・被災者支援法」という。)に基づく具体的な施策を充実させるべく、避難者の意見を聴取し、上記(2)のネットワークを活用して意見の取りまとめをし、提言するなどの積極的な活動を行う。
(4)新潟県弁護士会の会員を対象として避難者支援をテーマとする研修会を行い、避難生活が長期にわたる中、避難者が経済的にも精神的にも困窮し、疲労の度を深めてきており、弁護士による支援がますます重要になってきている状況であることを再度理解してもらってそうした認識を会員間で共有するようにするとともに、避難者支援に必要な知識の涵養に努める。
2 新潟県弁護士会は、国に対し、以下の点を強く求める。
(1)避難者が今後の生活をどうするかについて自己決定できるよう、速やかに、帰還できるか否か、帰還できるのであれば、いつ頃かなどの目処を提示するほか、放射線の今後の影響に関する正確な情報の提供をし、さらに中長期にわたる具体的な支援方策を策定すること。
(2)子ども・被災者支援法に基づく具体的な施策を、避難者の置かれている状況に沿ったきめ細やかな内容にして速やかに策定し、実施すること。
(3)避難者及びこれから避難をする者(以下「避難者等」という。)に対し、福島県内外を問わず、住宅の確保ができるようにするための支援策を講ずること。
(4)区域外避難者及びその家族に対しても、高速道路の無料化措置を直ちに講ずるなど、経済的支援を充実させること。
(5)原子力損害賠償紛争解決センター(以下、「原紛センター」という。)の和解仲介による解決に至るまでの期間を短縮させるために、仲介委員や調査官を増員したり、和解仲介手続を新潟県など避難者の多い地域で開催できるようにしたりするために予算措置を講じる等の施策をとること。
3 新潟県弁護士会は、福島県に対し、避難者等に対し、福島県内外を問わず、住宅の確保ができるよう支援策を講ずることを強く求める。
4 新潟県弁護士会は、原紛センターに対し、和解仲介手続を新潟県内で開催するなど、避難者が和解仲介手続を積極的に利用できるようにするための対応を取るよう強く求める。
5 新潟県弁護士会は、国民に対し、避難者は積極的に原発事故以前の生活の本拠を離れたわけではなく、原発事故による放射線による汚染を避けるために避難することを余儀なくさせられたものであり、その被った負担及び苦労は察するに余りあること、そして、損害賠償をはじめとする被害回復、そして生活再建のためには、国民が、避難者の置かれている状況を理解して国民全体で避難者を支えていくことが不可欠であることをあらためて想起し、その心情に思いを致すよう呼びかけるとともに、会として、避難者に寄り添う支援をさらに続けていくことを宣言する。

第2 決議の理由
1 新潟県弁護士会(以下、「当会」という。)は、原発事故発生後、速やかに東日本大震災等復興支援対策本部を立ち上げ、県内外の避難所等において、法律相談をし、東京電力に対する賠償説明会を行うなどし、避難者に対する支援活動を行ってきた。
そして、今なお多くの避難者が福島県内外において避難生活を余儀なくされている。新潟県においても、11月26日現在の避難者の受入数は6154人にも及んでいる。原発事故が発生してから、1年半以上経過したにもかかわらず、国からは、いまだに避難者が原発事故発生前の生活の本拠地に帰還できるのか否か、帰還できるのであればいつ頃かなどの目処はまったく提示されていない。また、放射線の今後の影響に関しても、正確な情報の提供がされているか疑問であり、避難者はどのような情報を信じていいか、現在においてもわからない状態である。さらに、原紛センターにおける和解仲介手続もなかなか進んでいない状況である。
このように、避難者は、避難生活が長期化し、今後の見通しの立たない中で、精神的にも経済的にもますます困窮し、疲労の度を深めてきており、支援の必要性は、日を追って増大こそすれいささかも減少することはない。
そこで、当会は、避難者に寄り添う支援をさらに続けていくために、次のことを宣言する。
2(1)避難者の中には東京電力に対する損害賠償について、適切な知識、情報を持たずに不安を抱えている者が少なくない。当会は、避難者に対し、東京電力に対する損害賠償について、適切な知識や情報を提供するべく、引き続き、法律相談を継続するとともに、広報活動に努める所存である。
(2)当会は、本年7月28日、「震災復興~人としての復興~をめざして 弁護士の役割と可能性」と題して、シンポジウムを行った。同シンポジウムでは、避難者においては、弁護士は、敷居が高く、避難者が弁護士に支援を求めるのは容易ではないこと、避難者に必要な支援を受けるには、支援者相互間の連携が必要であり、避難者のニーズに応じた支援を各支援者が行うことが必要であることが指摘された。
当会では、こうした指摘を虚心に受け止め、弁護士の敷居を低くする努力をし、引き続き避難者の元に出向いて自ら積極的に支援を継続していく。
また、もとより、避難者に対する支援は、避難者のニーズが多様である以上、ひとり弁護士だけによって十全に行いうるものではなく、支援者同士が連携し、避難者支援ネットワークを形成する必要がある。避難者が支援者に支援を求めた場合に避難者個々のニーズに応じた最も適切な支援がなされるように努めるべきであり、そのためには、ネットワークを生かして他の支援者につないでいくなどの活動が必要である。
その実現のために、当会は、地方公共団体、NPO、避難者交流拠点関係者及びその他の諸団体・関係機関等と連携して、避難者支援ネットワークの形成に積極的に関与してその一翼を担い、避難者が適切な支援者にたどり着ける体制の構築に努める。
(3)平成24年6月27日、子ども・被災者支援法が成立した。同法は、「子どもに特に配慮して行う被災者の生活支援等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、被災者の生活を守り支えるための被災者生活支援等施策を推進し、もって被災者の不安の解消及び安定した生活の実現に寄与することを目的」としている(1条)。
同法は理念法(いわゆるプログラム法)であって、具体的な施策はこれから策定されるところである。具体的な施策の内容いかんによって、避難者の不安の解消や安定した生活の実現も図られるかどうか、大いに影響する。
当会は、具体的な施策を充実させるべく、避難者から意見を聴取し、上記に記載した避難者支援ネットワークにより、他の支援者からも避難者の不安の解消等のために必要な具体的な施策を聴取し、意見を取りまとめ、提言し、さらに、日本弁護士連合会、関東弁護士会連合会、単位弁護士会、NPO、福祉団体、被災者団体等と連携をはかって、国の立法機関や関連省庁に働きかけを行うなどの積極的な立法活動を行う。
(4)避難者に対する支援は、ひとり弁護士だけが行うものではないものの、弁護士による支援は不可欠である。避難生活が長期にわたり、精神的にも経済的にも困窮し、疲労困憊の度を深める中、さらに弁護士による支援の必要性が高まっているといえる。
当会は会員を対象とする避難者支援をテーマとする研修会を行い、現在の状況を認識するとともに、避難者支援に必要な知識を習得し、さらに、支援活動を充実させるように努める。
3(1)現在、避難者がいちばん困っているのは、先の見通しが立たないことである。先の見通しが立たないため、当面は避難先における避難生活を続けることを余儀なくされているとはいうものの、いつかは原発事故前の生活の本拠地に戻ることにするか、それとも避難先において定住し、進学、就職などするかといった将来的・恒久的な生活設計については、判断がつかないままでいる人が少なくない。
国においては、区域内避難者については、戻ることができるか否か、戻ることができるのであれば、いつ頃、戻ることができるのか、また、戻ることができないのであれば、その旨、速やかに提示すべきである。
また、区域外避難者に対しては、生活の本拠地に戻るかどうかを決定するためには、放射線の今後の影響に関する正確な情報提供を速やかにすべきである。
さらに、中長期にわたる具体的な支援方策を策定し、避難者がどのような支援のもとで生活を安定させることができるかを主体的に判断できるよう速やかに明確な情報として提示すべきである。
(2)子ども・被災者支援法において、国は、「被災者生活支援等施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置」を講じる必要があり(4条)、「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針」「を策定しようとするときは、あらかじめ、その内容に東京電力原子力事故の影響を受けた地域の住民、当該地域から避難している者等の意見を反映させるために必要な措置」を取る義務がある(5条)。
また、国は、「支援対象地域からの移動の支援に関する施策、移動先における住宅の確保に関する施策、子どもの移動先における学習等の支援に関する施策、移動先における就業の支援に関する施策、移動先の地方公共団体による役務の提供を円滑に受けることが出来るようにするための施策、支援対象地域の地方公共団体との関係の維持に関する施策、家族と離れて暮らすこととなった子どもに対する支援に関する施策その他の必要な施策を講ずる」べきである(9条)。
国は、これらの条文をふまえ、避難者が置かれている窮状を正しく認識してきめ細やかな支援をするために、避難者の「生の声」を聞き、速やかに行動すべきである。
放射線による被ばくについては、避難者の不安が特に大きいところであるから、国は、原発事故にかかる放射線による健康への影響に関する調査のほか、医療の提供に必要な施策を速やかに講じるべきである(子ども・被災者支援法13条参照)。
(3)福島県は、11月5日、原発事故に伴う県内の避難者について、民間借上げ住宅支援の対象とすること及び福島県外の借上げ住宅について新規受付を12月28日で終了することを発表した。
民間借上げ住宅制度は、災害救助法に基づく支援であり、受け入れ先都道府県が民間賃貸住宅を借上げ、被災地からの避難者に対して提供し、その費用を福島県に求償し、最終的に最大9割を国費で負担する仕組みである。
これまで、福島県内における避難者に対しては、民間借上げ住宅制度による支援がされていなかったことから、福島県内においてもこのような支援がなされることになった点は評価しうる。また、福島県外に避難していた者が福島県内に避難先を変える際にもこの支援を受けることができるようになり、特に母子避難世帯においては、父親との二重生活が大きな負担になっていたところ、この解消にも資すると考えられる点からも評価しうる。
しかし、この支援についても、11月1日現在で既に避難をしている者が対象であり、これから避難をしようとする者に対しては適用されない。また、子どもや妊婦がいる世帯以外は支援対象の範囲外となっている。
さらに、福島県外の借上げ住宅について、新規受付が12月28日で終了することから、それより後になってから放射線のリスクを避けるために県外に避難しようと決断する者については、支援が制限されることになる。
上記のとおり、民間借上げ住宅支援制度は災害救助法に基づく支援であることから、福島県がその支援対象範囲を決めることになっている。
しかし、そもそも、子ども・被災者支援法においては、避難者の住宅の確保についても必要な措置を講ずることになっているほか(9条)、避難者の住宅の確保については予算措置が必要なところであり、福島県における支援には限りがあることからすると、国が率先して、避難者の住宅の確保について必要な措置を講じ、避難者にとって避難先を決める選択肢が狭められないようにしなければならない。
(4)現在、区域外避難者やその家族に対しては、高速道路の無料化措置がなされていない。
しかし、区域外避難者の多くは母子避難家庭であり、父親は生活を支えるため、福島県内にとどまり、愛する家族が離ればなれの生活をしている例が多く見られる。
子どもにとって、父親と実際に触れ合い、愛情を受けることが非常に重要であることは論を待たず、過去の災害を見ても、母子避難者は父親とのコミュニケーションギャップから家庭崩壊にいたっているケースも多く見受けられる。
区域外避難者は、二重生活による生活費や交通費の増加に加え、東京電力からの損害賠償も生活費等の増加にはまったく見合っておらず、交通費を捻出することにさえも困り、父親が県外に避難している子ども等に会いに来る回数を減らさざるを得ない状況になっている。
報道によれば、10月19日に国土交通大臣が区域外避難者に対しても高速道路の無料化措置を拡大することを検討していることを明らかにしたとのことであるが、国は、かかる措置について一刻も早く具体的に決定して執行し、この措置が合理的期間内にわたって引き続き継続していくような方策を取るべきである。
(5)原紛センターによれば、11月22日現在の和解仲介手続の申立件数は4641件であるところ、既済件数は1555件であり、現在進行中の件数は3086件とのことである。
当初、和解仲介手続は申立てから3か月程度での解決と説明されていたところ、実際にはその倍以上もかかる状況となっており、特に区域外避難者に対する和解仲介手続は停滞しているとされている。
その一因としては、仲介委員や調査官が少ないことがあげられる。
また、和解仲介手続が利用しにくい要因として、東京都と福島県内にしか原紛センターの事務所がないことも挙げられる。言うまでもなく、避難者は全都道府県におり、避難者の居住している地域において、和解仲介手続を開催できるようにすることが利用の負担を減らすことにもなるし、和解仲介手続において、申立者の声を反映させられることになり、利用が進むものと思われる。
国においては、仲介委員や調査官を増員するほか、全国各地で和解仲介手続ができるよう、予算措置を講じる等の施策を早急にとるべきである。
4 国は、子ども・被災者支援法に基づいて、避難者の住宅の確保についても必要な措置を講じるべきであるが、その実現にまだ時間を要するとすれば、それ以前においては、福島県が主体となって避難者等の救済を図らなければならないというべきである。すなわち、災害救助法を可能な限り活用し、避難者等が避難先を決める際の選択肢が狭められないようにしなければならない。
福島県は、11月1日現在で既に福島県内に避難している者や子どもや妊婦がいる世帯に限らず、民間借上げ住宅支援の対象にすべきであるし、県外における新規の民間借上げ住宅支援の受付も継続するなど、福島県内外を問わず、住宅の確保が出来るよう支援策を講ずるべきである。新潟県弁護士会は、福島県に対し、このことを強く求める。
5 原紛センターは、避難者の和解仲介手続利用促進のために、新潟県など避難者が特に多い地域において、その地において、和解仲介手続をとるべきであるし、新潟県内では既に数多くの申立がなされているのであるから、少なくとも新潟県内において、和解仲介手続が積極的に利用できるようにするための対応を取るべきである。新潟県弁護士会は、原紛センターに対し、このことを強く求める。
6 避難者に対して必要な支援は多岐にわたる。
もっとも、避難者は自らの意思で好んで積極的に原発事故以前の生活の本拠を離れたわけではなく、原発事故による放射線による汚染を避けるために避難せざるを得なかったものである。
避難により、家族、親戚、友人らと離ればなれになり、住み慣れたわが家を離れ、故郷を離れ、今後の生活の見通しが立たない中、いつまで続くともわからない、避難生活を送る負担及び苦労は察するに余りある。
また、東京電力からの損害賠償の状況・見通しが芳しくなく、避難生活が長期化する中で、避難者が孤立を深めている状況からすれば、避難者の生活再建には、国民全体が避難者の置かれている状況を理解し、支えていくことが不可欠である。
新潟県弁護士会は国民に対し、あらためて国民全体が避難者を支えていく必要があることを想起するよう呼びかけるとともに、会として、避難者に寄り添う支援をさらに続けていくことを宣言する。

平成24年11月29日
新潟県弁護士会臨時総会決議

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