新潟県弁護士会

声明・意見書

2013年03月1日|声明・意見書

新潟地方裁判所・家庭裁判所の村上支部、柏崎支部、南魚沼支部、糸魚川支部、十日町支部の設置の実現に向けた総会決議

第1 決議の趣旨
当会は、新潟県内における司法過疎偏在を解消するため、国及び関係地方自治体に対し、1項及び2項のとおり要請し、3項及び4項のとおり宣言する。
1 国に対し、新潟地方裁判所及び新潟家庭裁判所にそれぞれ村上支部、柏崎支部、南魚沼支部(旧六日町支部)、糸魚川支部及び十日町支部を設置することを求める。
2 新潟県内の全ての地方自治体に対し、県民・市町村民への司法サービスの充実のために必要な措置を講ずることを求めるとともに、前項記載の各支部管内に所在する市町村及び新潟県に対しては、当該地域における国の司法基盤の整備・充実を重点課題に据えて、その実現のために、国に対する働きかけを継続するなど粘り強く取り組んでいくことを要請する。
3 当会は、前項に記載した取り組みに関して、関係する各地方自治体に対して連携・協力を惜しまないことを宣言する。
4 当会は、県民に対するリーガルサービスの一層の充実を図るため、中規模都市・町等での法律相談センターの設置を進めることを宣言する。
第2 決議の理由
1 当会は、新潟県内における司法過疎偏在の解消のために取り組んできたところである。特に、平成20年度からは、県内各地の法律事務所の実態調査及び解消のための全国各地の取組みを調査研究してきた。その調査研究の成果として、平成23年2月10日、「新潟県内弁護士偏在過疎対策ミニシンポジウム」を開催した。当会会員はもとより、日弁連や柏崎市からも関係者が出席し、司法過疎偏在解消に向けたさらなる活動を誓ったところである。
また、当会は、同月25日、臨時総会において「裁判所支部の充実を求める決議」を行った。同決議において、当会は、新潟県民の司法アクセス改善のため、関係機関に対し、以下の点を実現し、裁判所支部を充実するよう求めた。
(1)新潟地方裁判所長岡支部において、裁判員裁判を実施すること
(2)新潟地方裁判所各支部において、労働審判手続及び行政訴訟事件の取り扱いを可能とすること
(3)新潟地方裁判所長岡支部及び高田支部において、簡易裁判所の刑事を除く判決に対する控訴事件の取り扱いを可能とすること
(4)新潟地方裁判所及び新潟家庭裁判所にそれぞれ、村上支部、柏崎支部、糸魚川支部、南魚沼支部(旧六日町支部)及び十日町支部を設置すること
(5)裁判官及び検察官の増員及び新潟地方裁判所各支部管内への適正な配置を行うこと
しかし、まことに遺憾ながら、上記要求に対する国の反応は恐ろしいほど鈍重であり、ほとんど何も実現されないままに今日に至っている。上記決議における上記(1)ないし(5)の各事項の実現は、どれひとつをとっても新潟県民の司法アクセス改善にとって不可欠なテーマであることは現在においても全く変わりはなく、むしろ、法の支配を日本全国にあまねく徹底させるとの理想に照らすときは、その重要度、緊要度は一層増大しているというべきであって、決議直後に東日本大震災が発生したという事情を勘案するにしても、裁判所及び財政当局の懈怠に対しては、厳しい批判がなされなければならないところである。
今回あらためて上記事項(4)の点を中心にしてその実現に向けて舵を切るために決議を行うものであるが、他の事項もすべて県民への法的サービスの充実のための重要度が劣るものではなく、当会として、これらの点に関して要求をとりやめたわけでないことはいうまでもない。
2 新潟地方裁判所及び新潟家庭裁判所にそれぞれ村上支部、柏崎支部、南魚沼支部(旧六日町支部)、糸魚川支部、及び十日町支部を設置する必要性
現在新潟県内には、新潟地方裁判所及び家庭裁判所について、それぞれ、本庁(新潟市所在)の外に、長岡支部(長岡市所在)、高田支部(上越市所在)、三条支部(三条市所在)、新発田支部(新発田市所在)、佐渡支部(佐渡市所在)がある。かつては、これらに加えて、村上支部(村上市所在)、柏崎支部(柏崎市所在)、六日町支部(当時の六日町所在)糸魚川支部(糸魚川市所在)、があった。しかるに、平成2年5月の裁判所支部統廃合において、全国で41の地方裁判所・家庭裁判所支部が統廃合された際に、新潟県内においては、村上、柏崎、六日町、糸魚川の4支部が統廃合の対象となり、当会は地元関係者を交えて存続運動を展開し、地元住民との懇談会、県民集会、最高裁判所への陳情、新潟地方裁判所への意見書提出など行ったが、その甲斐なく、いずれの支部も廃止された。
当時の最高裁判所の説明によると、支部の廃止基準は、事件数と、受け入れ庁となるべき隣接の支部又は本庁までの公共交通機関による所要時間との相関関係により判断されたとのことである。
しかし、事件数が少ないからといって、その地域に裁判所がなければ、当該地域に居住する住民にとっては、迅速かつ充実した裁判を受ける権利が満たされないこととなる。地裁本庁管内に居住する住民と比較して極めて不公平である。また公共交通機関による所要時間を基準としたとしても、実際には電車等の本数が少ないことが慮外に置かれてしまっている。裁判所まで出頭することが容易でない人達、すなわち裁判所アクセス弱者と呼ぶべき人の数は少なくなく、それが、国の処置、それも法の番人であるはずの最高裁判所が関与することによって生み出された事態であるということは、法の支配のあまねき徹底という観点に逆行する点において、看過できない重大な疑念をはらむものであった。とくに、上記の各支部が管轄する地域はいずれも豪雪地帯に存し、冬季においては積雪のために交通機関がマヒする事態も頻繁に生ずる。当該地域の住民の裁判を受ける権利を保障するためには、これらの地域に裁判所支部が存在することは必要不可欠である。
近年、上記の廃止された支部管轄区域内に、新たに法律事務所が相次いで開設され、弁護士が定着するようになってきた。柏崎市内2事務所、南魚沼市(旧六日町)2事務所、糸魚川市1事務所である。廃止された支部管轄区域内ではないが、これまで法律事務所のなかった十日町市にも1事務所開設された。柏崎市と糸魚川市については、当該市が事務所開設援助金を支出するという、国内でも画期的な対応により弁護士を迎え入れる形態をとったものである。また、これらの事務所の中には日本弁護士連合会からの援助金を受けているものも含まれている。当会も設置・運営については、様々な角度からアドバイスするなど、支援をしてきたものである。地方自治体や弁護士会が自助努力によって弁護士の過疎地域への進出を促している一方で、国の逆行政策のゆえにもっとも重要な司法基盤である地方裁判所・家庭裁判所支部が廃止されたままになっているというのが、実は司法過疎なるものの置かれている実情なのである。このような情勢に照らせば、廃止された各地裁支部を復活させる必要性は大きいというべきであり、一刻も早くその実現に向けた着手がなされなければならない。
家庭裁判所については、地方裁判所以上に復活の必要性が大きい。
まず、家事事件は、人口に比例して事件が発生する性質があるため、本庁と支部との間での事件格差は顕著ではない。また、家事事件は代理人を付さず、当事者本人で手続きを執る場合も多く、より地域に密着した裁判所であることが要求される。それゆえ、廃止された各家庭裁判所支部を復活させ、当該支部において、家事審判、調停手続が行われるべきである。
少年事件は、少年の可塑性を考慮し、少年自身の保護、育成を主たる目的として審理が行われるという思想を根底にし、少年の家庭環境、生活環境などの社会的事情を考慮しながら、少年の処遇を決めていく手続である。少年の保護、育成のためには、親族、勤務先等関係者の協力が不可欠であるところ、これら関係者が手続に関与するためには、各地域で手続きが執られることが望ましいことはいうまでもない。従って、少年事件についても、廃止された各家庭裁判所支部を復活させ、同支部にて取り扱われるべきである。
また、廃止された支部のほか、十日町市においては、およそ7万人の人口規模があり、一つの社会的・経済的地域であるうえ、日本有数の豪雪地帯であることから、同地域においては、地方裁判所・家庭裁判所の支部設置の必要性は高いといえる。
ところが、現在、十日町市を管轄する地方裁判所支部は長岡支部であるところ、同支部との直線距離は約35キロメートルもある。高速道路を利用して移動したとしても、1時間近くを要する地理的関係にある。住民の中には自動車を持たない者も少なくないと思われるが、十日町市民が長岡支部に行こうと鉄道に乗る場合においては、乗り換えが必要となり、1時間以上を要することになる。同地域は、日本有数の豪雪地帯であるから、降雪時にはこれ以上の時間を要することはいうまでもない。このような地域においても、地裁支部を設置し、当地において紛争を解決すべきであることは他の廃止された支部地域と異なるところはない。
もとより、市民が生活をし、経済活動をすれば、期せずして法的トラブルに巻き込まれることがあるのは、多く経験するところである。その際に、裁判所を利用して、早期に紛争を解決しようと考えるのは正当であり、紛争が長引くことによって、生活や経済活動に支障が生じるのは避けられなければならない。
憲法第32条には、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定し、裁判を受ける権利を保障しているが、これは、既存の裁判制度の枠組みの中で裁判を受ける権利を認める趣旨だけではなく、国民が国に対し、裁判を受ける権利を保障するにふさわしい裁判制度の構築を要求する趣旨も含まれていると考えるべきである。なぜなら、既存の裁判制度自体が国民の裁判を受ける権利を十分に保障できていない場合、それをもとに裁判を受ける権利が保障されても、全ての国民が法の支配の利益を享受することはできないからである。
憲法第32条が、全ての人が裁判制度を通じて自己の権利を行使する機会を保障したものとするならば、いかなる地域に住む人であっても、裁判所にアクセスする機会が実質的に保障されていなければならない。新潟県内においては、廃止された支部の復活及び十日町支部の設置により、はじめて地域住民が裁判所にアクセスする機会が実質的に保障されるものである。
よって、当会は、国に対し、新潟地方裁判所及び新潟家庭裁判所にそれぞれ村上支部、柏崎支部、南魚沼支部(旧六日町支部)、糸魚川支部、及び十日町支部の設置を求める。
3 地方自治体が司法サービスの充実に取り組む必要性と果たすべき役割
裁判所支部の復活及び設置については、地方自治体の自主的努力が欠かせない。
上記した事情から明白なとおり、裁判所支部の統廃合は、国の財政的事情を錦の御旗に展開された経緯が明らかであり、そこでは、サイレントマイノリティー(静かなる少数者)の内なる声は、全くと言ってよいほど無視されてきた。
この点、昭和63年4月の簡易裁判所の廃止においては、新潟県内では当初、十日町、小千谷、巻、新津の4簡易裁判所が廃止対象とされていたところ、十日町及び新津は廃止の対象から外されて存続が決まり、今日に至っている。両簡易裁判所が廃止対象から外された理由については、それぞれの地域の地方自治体が声を挙げて廃止反対運動を展開したことが決定的な意味をもっていたことは明白である。
そもそも地方自治体は、地域住民にとっては国に比べてはるかに身近な存在である。住民が首長や議員、職員などと腹を割って話し合えるという要素も、無視すべからざる意義を持つ。声高に言い難い要求を地道にボトムアップしていくという作業は、まさに地方自治の本質に適合するものというべきである。
司法基盤の整備ということは、経済的利益に直結するように見えないために、地方自治体の首長等にとっては、関心の対象として背後に追いやられがちなのかもしれない。しかし、実際には、解決されるべき法的紛争は、人がいる限りはどこにでも存在しうるものであり、いったんそれが発生すれば、それに関わる者にとって、その事態の深刻さは他の者には伺いしれない重さ、奥行きを備えている。わが国は、「法の支配」の下にあるといわれる。憲法上人権のカタログが用意されており、それが侵害された場合には、最終的には、先に述べたとおり裁判を受ける権利によって実質的に保障されるのである。地方自治体が法の支配の実質化において果たすべき役割は、決して軽んぜられて良いものではない。
加えて、地方自治体が、住民の権利保障と福祉増進の観点から、地域における総合法律支援の実施及び体制の整備に関し、必要な措置を講ずる責務を有しているという事実も忘れるわけにはいかない。現代的な法の支配のあるべき姿ということからすれば、司法基盤の整備が地方自治体の責務であることは、論をまたないところであるというべきである。巷間盛んに喧伝されつつある「地方分権」の射程には、国家が独占する司法権について、国家に対して裁判所支部の恣意的な配置を許容することなく、住民サービスを第一義とした適正配置を要求して実現する活動の正統性が包含されているというべきである。新潟県及び新潟県内の各市町村におかれては、このことを深く自覚し、司法基盤の整備、ひいて域内における法の支配の実質化ということを、自ら住民のためにはたすべき役割と位置付けるべきものと考える。
こうした役割は、裁判所支部の適正配置の国に対する要求という問題だけにとどまらず、地域住民が法的トラブルに巻き込まれた際、弁護士にアドバイスを受けられるよう体制を整備するということをも重要なテーマとすべきことは論をまたないところである。
よって、当会は、新潟県内の全ての地方自治体に対し、県民・市町村民への司法サービスの充実のために必要な措置を講ずることを求めるとともに、支部の復活、新設をめざすべき各支部管内に所在する市町村及び新潟県に対しては、当該地域における国の司法基盤の整備・充実を重点課題に据えて、その実現のために、国に対する働きかけを継続するなど粘り強く取り組んでいくことを要請するものである。
4 支部復活、新設に関する当会の姿勢
当会は、地方自治体が行おうとする司法基盤の整備・充実のための取り組み、とりわけ裁判所支部の復活、新設をめざす活動に対しては、会をあげて全面的に協力していく所存である。
もっとも、この点は、単に協力にとどまるのか、さらに一歩進んでより主体的に取り組むべきかについて検討を要する点がある。なぜなら、われわれ弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義の実現を使命とするところ(弁護士法第1条第1項)、弁護士は法律分野における高度の総合的な専門職と位置づけられ、法律事務の独占を認められており(同法第72条)、かつ、このような職責を有する弁護士の登録、指導、監督、懲戒、報酬等について、完全な自治権が付与されていることからすれば、弁護士及び弁護士会はまさに法の支配を実現する主体として、その責務は非常に重いものと言わなければならないからである。
ただ、そのことは理念の問題であり、いずれにせよ当会としてはこの問題に全力で取り組む所存であり、理念の違いは当会の姿勢の軽重、継続性には影響するものではない。当会は明確な努力目標を掲げ、新潟県や関係する市町村、その首長や議員、住民、さらに志を同じくする学識や日本弁護士連合会、関東弁護士会連合会その他の各ブロック弁護士会連合会、他の単位会などすべての勢力と協調し、目標の実現の日まで一切の努力を惜しまない所存である。
5 中規模都市・町等での法律相談センターの設置
地域住民が充実した司法サービスを受けるには、弁護士へのアクセスが容易である必要があるのは言うまでもないことからすれば、弁護士会として弁護士過疎・偏在に取り組む必要がある。
当会は、これまでも、新潟県内の多くの地方自治体に対し、法律相談の重要性を説き、地域住民のほか、地方自治体にとっても、利用しやすい法律相談制度を広げることに努めてきた。
さらに、先にも触れたとおり、また、法律事務所の設置については、柏崎市や糸魚川市が設置費用の補助制度を設けており、実際に補助制度を利用し、両市に計3つの法律事務所が設置された。両市の補助制度は、法律事務所が地域に存在することの重要性を理解していただいたものであり、当会としても感謝しつつ、全面的な協力を惜しまずに取り組んできたところである。今後、両市以外にも法律事務所開設にあたっての補助制度を設けてもらうべく、当会としても働きかけを継続するとともに、協力する姿勢を貫徹して行く所存である。
法律相談所の設置についても、地方自治体の協力に負うところが大きい。村上相談所は村上市神林支所の一角を低廉な費用で借りることができ、応接設備や複合機などを備え置くことができたものである。今後、新潟県内各地に法律相談所の設置を進める際、地方自治体から協力を得ることが欠かせないところである。
新潟県内には、地方裁判所・家庭裁判所の支部が併設されていない独立簡易裁判所が6つある。村上、新津、柏崎、南魚沼、十日町及び糸魚川の各簡易裁判所である。これらの簡易裁判所の管轄内において、当会が法律相談所を設置しているのは、村上簡易裁判所の管轄内のみである。
新津、十日町、柏崎、南魚沼及び糸魚川の各簡易裁判所管轄内に新たに法律相談所を設置し、弁護士へのアクセス解消を図る必要がある。さらに、例えば、五泉市、阿賀野市、新潟市南区、加茂市、魚沼市、湯沢町、妙高市など新潟県内の中規模都市・町等においても法律相談所を開設するなど、地域住民にできる限りきめ細やかな司法サービスの提供ができるよう、当会としては、今後とも広い視野に立ち、労力を惜しむことなく、新潟県内における法的サービスの充実に向けて、当会として取り組んでいくことを決意するものである。
以上決議する。

2013年(平成25年)2月28日
新潟県弁護士会臨時総会決議

サイト内を検索する

連絡先・交通アクセス

新潟県弁護士会 新潟相談所

新潟県弁護士会

〒951-8126
新潟県新潟市中央区学校町通1番町1番地
TEL.025-222-5533TEL.025-222-5533詳しい情報を見る

交通アクセス

バス:新潟駅万代口から中央循環線バス乗車、市役所前下車。バス停より300m。
車:新潟駅から約10分。

  • 弁護士を講師として呼ぼう!弁護士派遣制度
  • ひまわり基金運営委員会 人権賞
  • 子どもの悩みごと相談 毎週月・木 16〜19時
  • 中小企業の法律相談はひまわりほっとダイヤルへ
  • twitter @mamorun2014
  • ひまわりお悩み110番 0570-783-110
  • ストップ、えん罪!
  • 司法修習生の方へ
  • 東口日本大震災の被災者の皆様へ
  • 新潟県弁護士会住宅紛争審査会
  • 日本司法支援センター 法テラス
  • 公益財団法人 日弁連法務研究財団
  • 関東弁護士会連合会
  • 2016年1月16日 防災シンポジウム 動画によるご紹介
  • 2016年1月16日 防災シンポジウムご報告
  • 弁護士になろう!
スマホ・パソコンからの
相談予約はこちら