新潟県弁護士会 – 弁護士会

声明・意見書

2013年07月9日|声明・意見書

民法改正に関する意見書

【意見の趣旨】
新潟県弁護士会は、現在、法務省法制審議会民法(債権関係)部会で進められている民法(債権関係)改正審議 に関し、以下のとおり意見を申し述べる。

1 民法(債権関係)改正の在り方について
同改正の社会的必要性(立法事実)の有無を慎重に審議するものとし、仮に改正するとしても、立法事実を踏まえた必要最小限度の改正にとどめるべきである。
2 現行の法制審議会民法(債権改正)部会について
同改正によって大きな影響を受ける国民の声を幅広く反映させるため、組織体制を改め、より国民の身近にいる弁護士の委員数を大幅に増員する等して弁護士や弁護士会がより積極的に審議に関与できる仕組みにすべきである。

【意見の理由】
1 改正の在り方について(立法事実の有無や現行民法との継続性、積み重ねられてきた判例等を検討して慎重に審議すべきであること)
(1)民法(債権関係)改正の必要性については「同法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする等の観点」 から検討するとされている。
この点、現行民法においても、深刻な社会問題となっている保証被害等、立法の必要性が認められる分野が存することは否定しない。
しかし、さらに進んで、現在の我が国において、債権分野だけを取り上げ、その内容について、従来の法体系の根本的な考え方を含めて変更するような改正を行う社会的必要性(立法事実)までは見出すことはできない。
民法は私法の基本法であり、国民生活全般及び事業活動全般(とりわけ中小零細企業)に及ぼす影響が大きいことから、その大幅な改正については慎重に審議することが必要不可欠である 。
(2)また、民法の各分野の整合性や法体系は、民法を前提に構築されてきた特別法や関連法規、膨大な数の、合意や契約、紛争事例における判例や解釈、行政実例、企業実務その他、民法制定以降百年以上に亘って積み重ねられてきた国民生活の歴史である。民法の改正に当たっては、国民生活、経済の円滑な発展を確保するために、この歴史との統一性や継続性に十分な留意が払われるべきである。
仮に大幅改正の必要性があるならば、財産法全体の改正を統一的に検討する必要があり 、それには十分な時間をかけて、改正を必要とする立法事実の有無について広く国民から意見を求めることが不可欠である。
(3)このたびの「中間試案」からは、そうした視点は見出しがたい。
立法事実が存すると思われる箇所(例えば、保証人規定 )がある一方、信義則や従前の条文解釈、判例に委ねることが望ましいところを条文として新設することにより、紛争処理の硬直化が危惧される箇所も存する。
また、新設改正の必要性そのものに疑問を抱かざるを得ない箇所も存する。
私法の基本法である民法について、「中間試案」のような「債権関係」のみの大幅改正は、無用な混乱を招く虞が強い。
特に、「中間試案」が対象とする分野(債権関係)は、国民の日常生活や経済活動そのものであるため、不必要な大幅改正は、大きな社会的な混乱を招きかねない。
これまで百年以上に亘り、行為規範、裁判規範として機能してきた民法典と膨大な数の判例の、規範としての適用範囲が不明確となりかねない。
紛争予防の観点からは、相手方の行動予測や結果予測が容易ではなくなった場合、それ自体が新たな紛争リスクとなり、国民生活の安心安全や企業活動の安定性が損なわれかねない。
(4)平成24年12月から平成25年2月にかけて実施された弁護士対象の今回の民法(債権関係)改正に対するアンケート調査(調査主体は中部弁護士会連合会司法制度調査委員会、山梨県弁護士会民事法制委員会、「弁護士の声を民法改正に反映させる会」)における質問に対する新潟県弁護士会会員の回答 内容をみると、以下の通りである。
質問 「あなたは、実際に弁護士として債権法の改正の必要を感じた事案にこれまで遭遇しましたか」
回答 「基本的に遭遇していない」が74名であり、「かなり遭遇している」等の回答者は皆無であった 。
なお、全国の弁護士約2000名の回答結果を見ても、「基本的に遭遇していない」が78%であり、「かなり遭遇している」等という回答は1%に過ぎなかった。
この回答結果は、民法を紛争予防や紛争解決のために日々利用している弁護士の一般的な認識を反映していると評価できる。
そうであれば、この結果は、我が国の現在において、民法(債権分野)全体について、根本的な制度の変更を含む大規模な改正に対する社会的必要性を否定する根拠の一つといえよう。
(5)中間試案では、最終的な改正箇所の条文数は不明であるが、現行民法よりも条文数や枝番が大幅に増えることが予想され、「国民に分かりにくい」民法典になると考えられる。
更に、今回検討されているのは債権関係の改正のみである。今後、他の財産法関係の改正や親族相続関係の改正が行われることが当然に予想されるところであるが、そうした場合、更に、複雑かつ細分化された民法典になりかねず、「国民一般に分かりやすい」民法典とはかけ離れてしまう虞がある。
(6)以上見てきたように、民法(債権分野)改正にあたっては、まずもって、改正の社会的必要性(立法事実)の有無について慎重に審議すべきである。
その上で、改正が必要というのであれば、立法事実に裏打ちされた部分について、現行民法体系との継続性を旨として、必要最小限度の改正をすれば足りるというべきである。

2 改正手続面における問題について
(1)現行の民法改正作業の在り方には、当初から問題があり 、従前より複数の学者
や単位会からの懸念表明があった 。しかし、そうした中でも審議は大幅改正あり
きの方向性の下、急いで進められてきたとの印象が強い 。
そもそも、法制審議会民法(債権関係)部会では、委員等の選任過程が不透明
な上、国民の多様な意見を十分に反映したとはいい難い人的体制を組んだうえで
改正作業が進められてきた (注8参照)。
民法は国民の日常生活や経済活動を支える基本法典であるから、法制審議会民法(債権関係)部会は、国民の意見をより反映した公正な議論を尽くすため、研究者や法務省職員中心の構成ではなく、民法のユーザーである国民各層の意見を広く取り入れることができる組織体制とすべきである。
(2)上記部会には弁護士委員もいるものの、裁判官、法務省職員、研究者だけで、6割以上を占め、民法改正によって最も大きな影響を受ける国民各層の意見を述べるべき委員は、全体数からみて圧倒的に少ないと思われる(注8参照)。
中間試案をみる限り、学術的色合いの濃い内容になっており、多条文化ないし複雑化しているきらいもある。
国民各層の生活実態に基づく意見だけでなく、民法の持つ行為規範性や裁判規範性について実務に基づいた視点から見解を述べ、民法の改正に反映させる必要がある。
そのためには、弁護士委員の大幅増員等、民法のヘビーユーザーというべき弁護士及びその構成組織である弁護士会の意見を積極的かつ十分に取り入れることのできる仕組み作りが必要である。

3 まとめ
民法(債権関係)は、国民生活や経済活動に密接に関わる分野であり、その改正が社会全体に及ぼす影響は極めて大きいのであるから、改正にあたっては、その必要性が十分に議論され、国民的な合意が形成されるべきである。
仮に、改正するとしても、その必要性について広く国民の合意が得られるものについてのみ最小限度の改正にとどめるべきである。
現在の民法(債権関係)の改正作業には、社会的必要性(立法事実)の検討の不十分さや組織体制や選任方法の不透明さがみられ、いずれの点でも見直しが必要である。
当会は、このまま見直しもなされずに改正作業が進行していくことにつき、法律実務家の集団として危機感を抱くものである。
法制審議会では民法(債権関係)改正の社会的必要性(立法事実)について、総論的な議論を避けてきたように思われる。
当会は、法制審議会がこのような態度を改め、
ア 民法(債権関係)改正に関し、その社会的必要性に焦点を当てた慎重審議を
行うこと、
イ その審議内容を即時公開するとともに、同審議会の構成メンバーとしてより国民に近い立場にある弁護士委員を大幅に増員する等して、弁護士や弁護士会が積極的に審議に関与できる仕組にすること
を求める 。

以上

2013年(平成25年)7月8日
新潟県弁護士会臨時総会決議

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