新潟県弁護士会 – 弁護士会

声明・意見書

2013年10月25日|声明・意見書

改めて生活保護法改正案の廃案を求める会長声明

本年10月15日、臨時国会の開催に伴い、「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「新改正案」という。)が閣議決定された。

当会は、本年5月29日、「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下「旧改正案」という。)について、「「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明」を公表し、①違法な「水際作戦」を合法化し、②保護申請に対する一層の萎縮的効果を及ぼすなど看過しがたい重大な問題があることから、その廃案を求めた。旧改正案については、批判の高まりの中、与野党協議により一部修正されたものが衆議院で可決されたが、本年6月26日の第183回通常国会の閉会に伴い廃案となった。

新改正案は、与野党の修正協議を踏まえ、申請の際に申請書及び添付書類の提出を求める24条については、1項の「保護の開始の申請は…申請書を…提出してしなければならない」との文言を「保護の開始を申請する者は…申請書を…提出しなければならない」との文言に変更し、また、同条1項及び2項に、いずれも、「特別の事情があるときは、この限りでない」とのただし書を加え、申請の意思表示と申請書等の提出を概念的に切り離す形に変更されている。これに対し、扶養義務者への通知及び調査に関する改正案24条8項、28条及び29条については、旧改正案に対し一切の修正がなされていない。

第183回通常国会審議の際の政府答弁等によれば、まず、改正案24条については、従前の運用を変更するものではなく、申請書及び添付書類の提出は従来どおり申請の要件ではないこと、福祉事務所等が申請書を交付しない場合も、ただし書の「特別の事情」に該当すること、給与明細等の添付書類は可能な範囲で提出すればよく、紛失等で添付できない場合も、ただし書の「特別の事情」に該当すること等を、法文上も明確にする趣旨で原案を修正したとされている。しかしながら、法文の形式的な文言のみからは、修正の趣旨がなお不明確であり、また、従前の運用を変更しないのであればそもそも法文の新設は不要なはずである。このままの規定であれば、法文が一人歩きし、申請を要式行為化し厳格化したものであると誤解され、違法な「水際作戦」をこれまで以上に、助長、誘発する可能性が極めて大きい。

また、改正案24条8項、28条及び29条については、政府答弁において、明らかに扶養が可能な極めて限定的な場合に限る趣旨であると説明されている。しかし、かかる規定の新設により、保護開始申請を行おうとする要保護者が、扶養義務者への通知等により生じる親族間のあつれきやスティグマ(世間から押しつけられた恥や負い目の烙印)を恐れて申請を断念するという萎縮効果を一層強め、申請権を形骸化させることは明らかであり、到底容認できない。

以上の通り、新改正案についても旧改正案に見られた基本的問題点は何ら払拭されていないと言わざるを得ない。

一方、当会は、2012年(平成24年)10月17日付意見書において、生活保護 基準が下がれば、現にぎりぎりの生活をしている生活保護を利用している人たちの生活費が減額され、また、生活保護の受給がより困難になる結果、多くの低所得の人たちの生活が危機にさらされ、その生命、健康にもかかわる取り返しのつかない結果を招きかねないことを指摘し、生活保護基準を引き下げることに対し強く反対することを表明した。それにも関わらず、政府は、世帯構成によって3年間で最大10%に及ぶ生活扶助費の引き下げを、本年8月から強行した。

さらに、本年10月4日に再開された厚生労働省の生活保護基準部会においては、住宅扶助や加算の見直し等が議論の対象とされており、今後さらなる生活保護基準の引き下げがなされるおそれもある。

憲法25条は、すべての国民に対し生存権を保障し、国に対し社会福祉、社会保障の向上増進に努める責務を課している。
それにもかかわらず、生活保護法の改悪と生活保護基準の引き下げを同時に進めようとしている政府の姿勢は、憲法尊重義務に明らかに反するものというべきであり、到底容認できない。

当会は、本年9月21日、生活扶助基準削減や今回の生活保護法「改正」の問題点を直視し、制度の改善と充実した支援のあり方を考えるために、「日弁連第56回人権擁護大会プレシンポジウム及び貧困問題全国キャラバン 生活保護が危ない~生活保護のあり方 あるべき支援を展望する~」を開催した。このプレシンポジウムの来場者は115名に上り、当会が参加者に対し配布したアンケートには65名もの方が回答した。参加者からは、「憲法に照らし、だれでも利用しやすく、自立しやすい制度にとの考え、また一人一人への人権の尊重が本当に大切と思います。」、「水際で保護を希望する人をシャットダウンする方法は無意味であるとあらためて感じた。」などの真摯な声が寄せられた。これらの回答にあるように、保護が必要な人に必要な支援がいきわたるようにすることこそが、生活保護法の目的であり、当会のプレシンポジウムの主題でもあった。政府は、このような声にこそ耳を傾けるべきである。

よって、当会は、新改正案の廃案を改めて強く求めるものである。

2013年(平成25年)10月24日
新潟県弁護士会
会長 味 岡 申 宰

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