新潟県弁護士会

声明・意見書

2014年05月26日|声明・意見書

憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する総会決議 決議理由

第1 憲法第9条に関する従来の政府解釈と、近時の政府の動き
1 従来の政府解釈
政府はこれまで、憲法第9条の下における自衛権の行使について、集団的自衛権(自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利)の行使は憲法上許されないとする一貫した解釈を示してきた。
すなわち、政府は、自衛権の発動については、①我が国に対する急迫不正の侵害(武力攻撃)が存在し、②この攻撃を排除するために他に適当な手段がなく、③自衛権行使の方法が必要最小限度の実力行使にとどまるという3つの要件に該当する場合に限定してきた。
この3要件を前提に、政府は、1981年(昭和56年)5月の政府答弁において、集団的自衛権を「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利」と定義した上で、「我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどめるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない」との考えを表明した。
この政府解釈は、その後30年以上にわたり一貫して維持されており、政府はいわゆる「専守防衛政策」を採用し、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢を示してきたものである。
2 集団的自衛権の行使を容認しようとする政府の動き
2012年(平成24年)4月、自由民主党は、憲法第9条第2項を削除し、集団的自衛権を行使できる「国防軍」を創設するなどの内容を盛り込んだ「日本国憲法改正草案」を発表した。
そのような中で同年12月に発足した第二次安倍晋三内閣は、憲法改正要件を緩和しようとするなど、憲法改正による集団的自衛権の行使を目指してきたが、国民の強い反対を受けこれを断念した。
ところが、安倍首相は、2013年(平成25年)2月、政府答弁の中で、憲法改正ではなく閣議決定による憲法解釈の変更で、集団的自衛権の行使を容認する方針を表明し、また2008年(平成20年)6月に集団的自衛権の行使容認等を提言する第1次報告書を作成した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下、「安保法制懇」という。)を再開した。
さらに2013年(平成25年)8月には、従来の慣行に反して外部から、集団的自衛権の行使容認論者とみられる人物を内閣法制局長官に登用する異例の人事を行い、同年秋の国会では、国家安全保障会議(日本版NSC)を設置し、特定秘密の保護に関する法律の採決を強行するなどした。
その後も政府は、国家安全保障戦略や、これに伴う新防衛計画大綱、中期防衛力整備計画、防衛装備移転三原則を閣議決定するなど、集団的自衛権の行使に向けた基盤整備を進めてきた。
そして今まさに、政府は、安保法制懇が本年5月に提出した報告を受け、閣議決定により従来の政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認するという暴挙に出ようとしている。

第2 憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は、恒久平和主義、立憲主義に反すること
1 恒久平和主義との関係
日本国憲法は、第二次世界大戦において、軍事力により多大な国民的犠牲が払われたことに対する深い反省を基に、その前文で、全世界の人々が平和に生きる権利たる平和的生存権を有することを確認し、併せて第9条で、戦争のみならず一切の武力の行使・武力による威嚇を放棄し、陸海空軍その他の戦力を保持せず、国の交戦権を否認する旨定めている。
一方、1945年(昭和20年)に発効した国際連合憲章は、戦争は違法なものであるとして、各国の海外での武力行使を国際法上原則として禁止し、例外的に武力を行使できるのは国際連合による集団的安全保障措置と、その措置が採られるまでの暫定的な個別的・集団的自衛権の行使のみとしたが、我が国の憲法は、国際連合憲章をさらに推し進めて、特にその第9条第2項において戦力の不保持と交戦権の否認を定め、軍事力によらない徹底した恒久平和主義を目指している点で、世界にも誇り得る先駆的意義を有する。
現憲法がこのように徹底した恒久平和主義を採用していることから、日本が直接攻撃されていない状況の下で自衛隊が外国を攻撃することを認めることになる集団的自衛権の行使は、憲法上当然に認められないという結論が導かれる。歴代政府が集団的自衛権の行使は憲法上許されないとする解釈を貫いてきたのも当然のことである。
これに対し、集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更により容認しようとする現政府の方針は、「解釈変更」の名の下に、現憲法の基本原則である恒久平和主義を変容させようとするものであって、到底許されるものではない。
本年5月に提出された安保法制懇の報告書では、「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」には集団的自衛権の行使は許容されるべきであるとの見解が述べられているが、どのような限定を付したとしても、集団的自衛権の行使自体が憲法上容認され得ないものであることに変わりはない。ましてや、同報告書の見解は、「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」にあたるか否かの判断を全面的に政府に委ねているのであるから、集団的自衛権の行使に対しおよそ何らの限定にもなり得ないことは明らかである。
また、同報告書は、「あるべき憲法解釈や法制度の整理の必要性を明らかにするための具体例」として、「従来の憲法解釈や法制度では十分に対応することができ」ないとする事例を挙げている。しかし、これらの事例は、現実的にはおよそ起こり得ない架空の事例、現行の解釈でも十分に対応可能な事例、又は自ら武力行使に踏み込むものであるため同報告書が求めるような対応をなすべきでない事例のいずれかに分類されるものであるから、これらの事例をもって憲法解釈変更の必要性を基礎付けるものということは到底できない。
さらに、同報告書は、集団的自衛権の行使が認められるとする根拠として、いわゆる砂川事件最高裁判決(最大判昭和34年12月16日)を挙げている。しかしながら、同判決は、旧日米安全保障条約の合憲性が争われた事案において、「憲法9条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではない」との結論を採用することの理由を述べる際に、「わが国が主権国として持つ固有の自衛権」に触れたにすぎず、集団的自衛権については何も述べてはいない。したがって、同判決を集団的自衛権の行使容認の根拠とするのは暴論といわざるを得ない。同判決以降も、集団的自衛権の行使は憲法上禁止されているという政府解釈が維持されてきたことは前述のとおりである。
つまり、安保法制懇の報告書は、現実的な必要性がないにもかかわらず、牽強付会な判例解釈を行い、まやかしの「限定」を付加することによって集団的自衛権の行使を容認させようとするものにほかならず、同報告書の考え方に基づいて集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更により容認することは断じて許されない。
2 立憲主義との関係
立憲主義は、全ての人々が個人として尊重されるために、憲法によって国家権力を制限し、人権保障を図る原理である。日本国憲法も、この原理に立脚して、憲法を最高法規とし、憲法に違反する法律や政府の行為を無効とし、国務大臣等の公務員に憲法尊重擁護義務を課して、権力に縛りをかけている(憲法第98条、第99条)。
立憲主義の下では、政府が憲法に反する行動をとるようなことがあってはならないのは当然のこと、政府として一貫してきた憲法解釈を、時の政府の一存で、あたかも政策の一つのように軽々しく変更することも許されない。
前述のとおり、これまで政府は、集団的自衛権の行使は憲法第9条の下では認められないという解釈を一貫して維持してきた。かかる解釈は、憲法が徹底した恒久平和主義を基本原則として採用したことから当然に導かれる結論であり、その時々の政府が恣意的に変更できるような性質のものでないことは、立憲主義の観点からも明らかである。憲法によって権力行使に縛りをかけられている立場にある政府が、その憲法の解釈を恣意的に変更することが許されるとするのは背理だからである。
これに対し、安倍晋三首相は、政府解釈の見直しについて、「最高の責任者は私です。私が責任者であって、政府の答弁に対しても私が責任をもって、その上において、私たちは選挙で国民から審判を受けるんですよ」などと答弁した(本年2月12日衆議院予算委員会での答弁)。また、安保法制懇の座長代理も、メディアのインタビューに対し、「憲法は最高規範ではなく、上に道徳律や自然法がある。(中略)(憲法などを)重視しすぎてやるべきことが達成できなくては困る」などと発言しており(本年4月21日付け東京新聞等)、立憲主義への誤った理解の中で集団的自衛権の行使容認が検討されてきた経緯が見受けられる。
選挙で審判を受ける覚悟さえあれば、憲法の基本原則に関わる変更を、時の政府の一存で行うことも許されるなどという考え方は、立憲主義を真っ向から否定するものであって、到底許されない。
そして、日本が集団的自衛権を行使できるようにするということは、憲法の基本原則を変更することを意味するのであるから、少なくとも憲法第9条の改正手続を経る必要がある。集団的自衛権の行使を容認し、専守防衛政策を放棄した場合には、他国の戦争のために地球の裏側にまで自衛隊を派遣して犠牲者を生み出す事態が生じ得ることになるが、それによって最も影響を受けるのはほかならぬ国民である。このように、集団的自衛権行使容認の可否の問題は、国民全体の最大の関心事の一つであるにもかかわらず、政府は、これを憲法改正というかたちで国民の議論に付すことさえせずに、時の政府による憲法解釈の変更という姑息な方法で実現しようとしているのである。
3 以上により、当会は、政府が閣議決定により憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認しようとすることに対し、日本国憲法が立脚する恒久平和主義、立憲主義に明らかに反するものとして、断固反対する旨の決議を行うものである。

2014年(平成26年)5月23日
新潟県弁護士会定期総会

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