新潟県弁護士会

声明・意見書

2006年05月9日|声明・意見書

共謀罪の与党修正案に反対する会長声明

1.司法改革のための最終意見書について

2001年6月12日、司法制度改革審議会は、司法改革のための最終意見書を発表し、その中で「国民が利用しやすく、判りやすい司法」「司法を支えるスタッフの質量の確保」「国民が参加し支える司法」という目標を設定し、これに基づき、内閣に司法制度改革推進本部が設置され、3年内を目処に司法改革関連諸法案の成立をめざすとされた。

これまでに、裁判官指名諮問委員会や地域委員会の設置、地裁・家裁委員会の設置・改組がなされてきた。本年4月からは、法科大学院が開設され、司法試験合格者は1,500名となり、近く3,000名まで増員されることとなっている。

2.裁判員法案等について

(1)裁判員及び検察審査会委員の守秘義務について

裁判員の守秘義務については、衆議院での一部修正により、懲役刑の上限が1年から6ケ月に下げられたが、依然として、裁判員は任務中のみならず任務終了後においても、職務上知り得た秘密について守秘義務を負うとされ、違反について懲役刑が法定されている。このような厳しい守秘義務を課することは裁判員を萎縮させ、参加意欲を減退させるものである。また運用を通じて、裁判員制度を改善していくために、裁判員自身が経験を語ることが大切であり有用であるにも関わらず、これを不可能にするものである。裁判員に対する守秘義務の強調は、国民の司法参加という本来の目的を損なう危険性があるといわざるを得ない。

また検察審査会法第44条についても、検察審査会委員に対して従来の罰金刑から、裁判員法案第79条と同様懲役刑が選択的に法定されることとなる。

そもそも検察審査会委員については、特定の守秘義務違反について罰金刑が法定されていたが、実際には審査会委員の良識に委ねられ、昭和22年に法制定後、守秘義務違反が問題にされることもなかったものであり、いまさら懲役刑を加えることの必要性は全く考えられない。

それゆえ裁判員・検察審査会委員については、任期中は、職務上知り得た事項を守秘義務の対象とするが、任務終了後は、自分以外の発言者が特定されるような形での評議内容の公開など一定の範囲に守秘義務を限定すべきである。また違反について罰則をもうけるにしても、現行検察審査会法と同様罰金刑にとどめるべきであるし、それで充分である。

(2)裁判官・裁判員の数について

裁判官と裁判員の数については、現在の部制度下では、3人の裁判官の一体性が強固であり、部総括裁判官の影響力の強さもあって、6名の裁判員が参加しても、市民の意見の反映は事実上困難である。あくまで裁判官は、1~2名とし、裁判員は9~10名とすべきである。

(3)評決について

法案の過半数では、充分議論が尽くされないまま、安易に結論が出される惧れがある。

法案の裁判官3人裁判員6人の合議体の場合、裁判官3人の意見が一致すれば後は2人の裁判員の賛成で他は反対でも関係ないこととなる。過半数の論拠として、現行法が過半数であることがあげられるが、司法改革は現状の司法のあり方に問題があるから改革されるものであり現行法を前提とすること自体が誤りである。

3.刑事訴訟法改正について

(1)開示証拠の目的外使用の禁止について

刑事手続において検察官から開示される証拠の「複製等」を、被告人もしくは弁護人が審理の準備以外の目的で「人に交付、提供すること、電気通信回線を通じて提供すること」を全面的に禁止し、被告人がこれに違反したときは懲役刑を含む罰則を科することとしている。また弁護人については「対価として財産上の利益その他の利益を得る目的」がある場合に刑罰の対象とされている。

しかしながら、証拠の内容を問わず、また公判廷で取り調べられたものか否かを問わず、一律に禁止対象としている点で、被告人の防御権を不当に制約し、また裁判公開制度や報道の自由とも抵触するおそれが大きいと言わざるを得ない。また弁護人についても「対価として利益をうる目的」としても、テレビの出演料や研究書を含む冊子での引用等が、これに該当すると解される余地が十分ある。

衆議院で一部修正され「前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、その私生活又は業務の平穏を害されているかどうか、当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか、その取り調べの方法その他の事情を考慮するものとする」との規定が挿入されたが、そもそも刑罰規定の構成要件としては、明確であることが不可欠であり、このような不明確で恣意的運用を可能にする規定は、それ自体が罪刑法定主義に違反すると言わざるを得ない。

本規定は、修正によっても、被告人の防御権を不当に制約し、裁判の公開原則や報道の自由と抵触するものである。

(2)取調べの可視化について

自白偏重の捜査・裁判をあらため、客観的証拠に基づく捜査・裁判を実現するためには、取調べの可視化が必要である。

裁判員制度の導入にともない、より一層公判中心主義が貫かれ、自白調書の任意性や検面調書の特信性などについて、裁判員がその審理・判断に参加するためには、取調べ状況をビデオやテープに録音するなど取調べの可視化の実現が不可欠である。

裁判員制度の導入とこれにともない刑事訴訟法を改正する場合、取調べの可視化が法律施行の必要条件であることを明確にすべきである。

(3)尋問、陳述制限の強化について

  1. 刑事訴訟法第295条の尋問・陳述制限命令違反について、弁護士会への措置請求規定がもうけられた。また刑事訴訟規則第303条1項の措置請求要件について「審理の迅速な進行をさまたげた場合」の要件を削除し、措置請求を容易にするのではとの指摘もなされている。
  2. 新潟地裁においては、通訳人の適否をめぐって弁護人の意見陳述を一方的に禁止し、監置命令と監置のための拘束命令を発した事案があり、平成16年3月29 日、弁護士会は、職権的な訴訟指揮は弁護活動を萎縮させ、被告人の弁護権を制約する恐れが有るとして、当該裁判官に申入れをした。
    当該事案は、控訴審で無罪となったが、一方的な尋問・陳述制限は、正当な弁護活動に対する侵害であるだけでなく、実体的真実発見を妨げる要因にもなることは明らかである。尋問・陳述制限の強化など、裁判の職権化に反対するものである。

4.代理人報酬敗訴者負担制度の導入について

この制度については、司法制度改革審議会の意見書の趣旨に反して、訴訟提起を萎縮させるものであり、とりわけ、消費者・労働・医療・行政などの分野ではその弊害が著しい旨指摘してきた。

今回の法案は、双方に訴訟代理人が選任されている場合で、双方が共同で訴訟上申し立てた際に、敗訴者負担となるものとしている。

しかしながら、法案が成立すれば、敗訴者負担の規定を契約約款に導入する動きが急速に広がり、実体法の解釈を含めて、なし崩し的に敗訴者負担制度が導入される危険性がある。

このままの立法化には反対であり、仮に立法化する場合には、少なくとも消費者契約、労働契約及び一方が優越的地位にある事業者間の契約についても、代理人報酬敗訴者負担条項の効力を否定するための立法化措置をとるべきである。

5.総合法律支援法案について

  1. 弁護士会は、当番弁護士活動を通じて、起訴前弁護の必要性を強く訴えてきた。また法律扶助協会を実質的に支え、広く国民が司法を利用できるよう法律扶助の充実をめざして活動を強化してきた。さらに公設事務所や法律相談センターの活動によって、司法過疎解消に努めてきた。
    これら活動の多くは、私たちの長年にわたる特別負担金を含むボランティア的な公的活動によって支えられてきたが、本来、国の財政支出によって実施されるべき事業である。
  2. 本法は、弁護士会の長年の活動を反映した側面をもっているが、同時に、この機会に法律扶助、国選弁護等の活動を、法務省の監督下に一元化するという方向を見逃すわけには行かない。とりわけ弁護活動は、国家の捜査・起訴に対して、被告人の憲法及び刑事訴訟法上の権利を護ることに本質がある。また法律扶助等の案件には、国家や行政機関を相手方とする事案も多数存在する。
    したがって、関与弁護士の職務の独立性と弁護士自治がきわめて大切であり「国家は必要な資金を出すが、内容について干渉しない」との原則を、組織・運営の両面から具体化し、条文化すべきである。
  3. 法案では、国選弁護、法律扶助などは、日本司法支援センターに一元化されることとなっており、同センターは独立行政法人とされているが、人事、運営を含めて法務大臣の監督下におかれ、日弁連の組織、運営に対する関与は、法文上明らかにされていない。また個々の弁護士が、これら業務に携わるためには、同センターが制定する法律事務取扱規定によるものとされている。
    このような状況では、弁護士業務遂行上の独立性が制約をうける危険性があると言わざるを得ない。
  4. 法案の一部修正によって、契約弁護士の「懲戒」規定が削除されたり、組織・運営について弁護士会の実質的関与が法務省側から説明されているが、法律の運用をもって法律の合理性、正当性を根拠づけることはできない。
    同センターの組織・運営について、日弁連の責任ある地位役割が法定化されるべきてある。また契約弁護士の業務の遂行については、弁護士会の諸規定にしたがっておこなわれることが明確にされるべきである。
  5. 公的弁護や法律扶助については、必要かつ充分な訴訟活動が保障されなければならない。同センターの財政運営状況によって、必要な弁護費用、必要な代理人費用が削減されるような事態は、許してはならない。また司法過疎に対する対応や犯罪被害者支援の活動などについても、当然必要な予算が組まれるよう、働きかけをしていく必要がある。

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