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声明・意見書

2006年06月6日|声明・意見書

出資法の上限金利の引き下げ等を求める意見書

意見の趣旨

当会は、2007年(平成19年)1月までに見直しが予定されている貸金業規制法及び出資法の上限金利のあり方について、以下の法律改正を早急に行うことを求める。

  1. 出資法第5条第2項の上限金利29.2%を、少なくとも利息制限法所定の年15ないし20%の制限金利まで引き下げること
  2. 貸金業規制法43条(みなし弁済規定)を廃止すること
  3. 出資法の日賦貸金業、電話担保金融に認められている年54.75%の特例措置を撤廃すること

意見の理由

1.はじめに

1999 年(平成11年)臨時国会において、出資法第5条第2項の上限金利が年40.004%から年29.2%に引き下げられた。そして、この上限金利については、施行後3年を経過した時点で、資金需給の状況その他の経済・金融情勢、貸金業者の業務の実態等を勘案して検討を加え、必要な見直しを行うとされていた(平成11年改正出資法附則8条)。

ところが、施行後3年を経過した平成15年通常国会において、いわゆるヤミ金対策法(貸金業規制法及び出資法の一部改正法)が成立したこともあり、金利の見直しの問題は、先延ばしとなり、ヤミ金対策法施行後3年を目途として、検討を加え必要な見直しを行うものとされた(平成15年改正出資法附則12条)。

ヤミ金対策法は、一部の条文については2003年(平成15年)9月1日に、その余の全部の条文については2004年(平成16年)1月1日に施行されたので、2006年(平成18年)9月から2007年(平成19年)1月が見直しの時期にあたる。

そのような中で、2005年(平成17年)3月、金融庁は、貸金業制度等に関する懇談会を発足させ、自民党も金融サービス制度を検討する会で貸金業制度の見直しの議論を始めた。消費者金融業界は、この機会を期に出資法上限金利の引き上げのみならず、貸金業規制法第43条に規定される、みなし弁済規定の適用の厳格化に歯止めをかけ、その適用条件を緩和すること、ひいては金利規制を撤廃し、金利を自由化することなどを企図している。

しかし、以下に述べる多重債務者を取り巻く環境、消費者金融業界の現状等に照らせば、上記消費者金融業界の主張どおり、出資法上限金利を引き上げたり、金利規制を撤廃することは、多重債務による被害を激増させることにつながるものであり、許されない。

むしろ、現状でも数多く存在する多重債務による被害をなくすためには、出資法上限金利は、例外なく、利息制限法の制限金利まで引き下げるべきである。

同様に、多重債務の原因である、日賦貸金業者や電話担保金融について出資法上限金利を超える金利での貸付を認めている特例措置は撤廃すべきであり、一定の厳格な要件のもととは言え、例外的に利息制限法の制限金利と出資法の上限金利の間(いわゆる「グレーゾーン」)での貸金業者による本来無効な超過利息の収受を事後的に有効とみなす貸金業規制法第43条は、既に立法事実が存在しない以上、廃止されるべきである。

2.出資法第5条の上限金利引き下げについて(意見の趣旨1項)

(1)多重債務者をめぐる社会状況

バブル崩壊後の長引く不況下、多重債務者は増え続けている。司法統計によると、自然人の自己破産申立件数は、2002年(平成14年)には21万4683 件、2003年(平成15年)には24万2,357件と急増し、2004年(平成16年)には21万1,402件と前年度比で減少に転じたものの、依然として20万件を超えている。これらの数値は平成5年の約4万件に比べ、約5倍の水準となっており、近年の自己破産申立件数の急増は顕著である。

以上の自己破産者の他に破産予備軍ともいうべき多重債務者が200万人にも及ぶと言われている。多重債務を原因とした失業や家庭崩壊や失踪は後を絶たず、更には多重債務による経済苦、生活苦による自殺も多発している。また、一家無理心中や凶悪な犯罪も発生している。これらの被害の救済と根絶のためには、現行の出資法、貸金業規制法の改正が必要不可欠である。

(2)消費者金融業者の高収益構造と過剰与信

我が国の大多数の消費者金融は、年2%前後の非常に低いコストで資金を調達し、貸付を行っている。

しかし、他方で法は、利息制限法第1条第1項では利息の最高限を年15~20%と定め、出資法第5条第2項では、原則として年109.5%、貸金業者については年29.2%という非常に高利な利率を超える貸付けについてのみ罰則を設けているにすぎず、このため、利息制限法と出資法との間には、民事上無効だが刑事罰の対象とならないといういわゆる「グレーゾーン」が存在し、多くの貸金業者が、利息制限法の上限金利を上回る年25%から29%という高利で貸付を行うという現状を作りだしている。

そして、このように高利で貸付けることで貸し倒れリスクを十分に見込めるため、多くの貸金業者は十分に信用調査を行うこともなく貸し付けを増やしており、現に貸金業界の消費者向け貸付残高は1999年(平成11年)3月期に約16兆円であったものが、2004年(平成16年)3月期には約20兆円にまで増加している。

このように、貸金業者は非常に低いコストで資金を調達できる反面、出資法が高すぎる上限金利を定めグレーゾーンを認めているために非常に高利での貸付を行っており、このことが、貸金業者が「貸せば貸すほど利益が上がる」構造を作りだしているのである。そして、かかる現状がいわゆる「過剰与信」を誘発し、多くの多重債務者を生み出す要因となってきたのである。

以上のように、過剰与信を行う消費者金融業者が増加し、その業務実態が不適正なものとなっているという現実からも、出資法に定める上限金利の引き下げが必要といえる。

(3)出資法の上限金利引き下げとヤミ金融問題

出資法の上限金利の引き下げに対して、貸金業界は、出資法の上限金利の引き下げが消費者金融業界の貸し渋りを生み、消費者金融業者からすら借入ができない層を増大させ、これらの層を食い物にするヤミ金融業者が蔓延すると主張している。

しかし、出資法上限金利引き下げとヤミ金融の増加との間には因果関係がなく、このような見解に理由はない。

すなわち、金利引き下げが貸付額に与える影響についてみると、平成12年に出資法上限金利が40.004%から29.2%に引き下げられた後も、貸金業者の消費者向貸付残高は伸びている。このような客観的状況に照らせば、出資法上限金利引き下げが貸し渋りの要因にならないことは明らかである。

むしろ、高金利こそがヤミ金融増加の原因である。すなわち、ヤミ金融が標的とする被害者は、主に過去に自己破産をした者や多重債務者である。前述のとおり、自己破産や多重債務の要因は、高利率による貸付及び貸金業者による返済能力を超えた過剰与信にあり、過剰与信を支えているのが高金利である。したがって、高金利こそがヤミ金融被害を生みだしているのである。

そもそも、ヤミ金融は正当な取引活動ではなく、金融取引に藉口した恐喝行為であり、かかる犯罪行為撲滅に必要なのはヤミ金融対策法等による取締であって、出資法上限金利の引き上げなどではあり得ない。

(4)出資法の目的達成のための上限金利引き下げの必要性

出資法は、金融業者等の違法な経済活動から経済的弱者である一般国民を保護する趣旨で制定されたものであり、利息制限法とともに、経済的弱者保護という社会政策的見地から立法されたものである。

出資法の上限金利は、昭和29年の施行後、過剰貸付、過酷な取り立て等が社会問題化したことを受けて、経済的弱者保護の見地から、昭和58年、平成12年にそれぞれ改正され、処罰金利の下限が引き下げられてきた。

しかし、現在、消費者金融業者が年利25%から29%という利息制限法をはるかに超える高金利での貸付営業を続けているために、消費者金融利用者のほとんどが、生活破綻と支払不能に陥る危険性にさらされているという現実が存在している。

このことは、現行の上限金利では、出資法の目的である経済的弱者保護という機能が十分に果たされていないことを意味するものである。

よって、経済的弱者保護という出資法の目的を十分果たすためには、その上限金利を利息制限法とを一致させるべきであり、現代の日本社会においては、それを一致させることについて何ら不都合は存在しない。

3.みなし弁済規定の廃止について(意見の趣旨2項)

以上述べたように、出資法上限金利の引き下げこそが重要であり、出資法に定める上限金利が利息制限法の制限金利まで引き下げられれば、必然的にいわゆるグレーゾーンの発生の余地はなくなり、みなし弁済規定は無意味な規定となり廃止されることとなるが、同規定は、以下の理由からも廃止されるべきである。

みなし弁済規定は、一定の業務規制を遵守した場合には利息制限法に対する例外を認めるという特典を与えることによって、貸金業者の業務の適正な運営を確保し、資金需要者等の利益の保護を図るべく、17条書面、18条書面の交付を含む一定の要件を満たす場合に、利息制限法の制限利率を超える利息・遅延損害金の支払いを有効な利息・損害金の支払いとみなしている。

しかし、グレーゾーン金利を容認するみなし弁済規定が多数の多重債務者を発生させ、生活が破綻した支払不能者を生み続ける要因となっていることについては、すでに繰り返し述べてきたとおりである。

このような状況の下、2006年(平成18年)1月13日及び19日、最高裁判所は、利息制限法所定の制限を越える約定利息の支払を遅滞したときに当然に期限を喪失する旨の特約の下での制限超過分の支払には、貸金業規制法第43条1項にいう「任意性」が認められないと判断し、みなし弁済における任意性の要件について厳格に解釈する立場を明らかにしたが、かかる判断は事実上みなし弁済規定を死文化するものといえ、司法府が、利息制限法を超える高利の受領は容易に認められるべきでないとの立場を明確に示したものといえる。

そもそも貸金業規制法は、貸金業者に業務規制等を課す代償(いわゆる「アメ」)として、消費者保護という同法の目的に反するみなし弁済規定を導入したといえるが、前述のように、みなし弁済規定には必要性がない上、消費者保護という法の趣旨に立ち返った場合およそ合理性が認められないこと、このままみなし弁済規定を存置することは、上記判例の趣旨に反することが明らかであることからすれば、もはや貸金業者に「アメ」としてのみなし弁済規定を認める理由は全く存しない。

したがって、みなし弁済規定も廃止するべきである。

4.日賦貸金業者、電話担保金融に対する特例措置の撤廃について(意見の趣旨3項)

現行法は、貸金業者のうち、日賦貸金業者、電話担保金融について特例を設け、刑罰対象利率を年54.75%とした上で、右利率をみなし弁済規定の上限利率としている(出資法附則8・14項)。

法が、日賦貸金業者・電話担保金融について他の消費者信用取引と異なる扱いをしている根拠として、これまで社会問題化するような大きなトラブルまではなかったこと、日賦貸金業者には集金のコストがかかること、等が挙げられてきた。

しかし、日賦貸金業者については、過酷な取立が問題となり、平成12年6月には刑罰対象金利を引き下げる法改正がなされたものであるが(平成13年1月1日施行)、これにより問題が沈静化することもなく、依然として過酷な取り立てに苦しめられる被害は後を絶っていない。

また、コストについては、他の一般の消費者金融業者が立地条件の良い市街地に店舗を構え、ATM設置等の設備投資を行うコストと比較すると、日賦貸金業者につき集金コストを殊更重視して格別に特例を認めるべき差があるとは考え難い。また、電話担保金融については、携帯電話の普及に伴い、電話加入権の価値が暴落し、近い将来電話加入権自体存在しなくなる蓋然性が高いのであって、現実にも電話担保金融業者の数は激減している。したがって、そのような消滅しつつある業種に対してあえて特例措置を認める意義は乏しい。

したがって、日賦貸金業者・電話担保金融に対する特例措置は撤廃されるべきであり、出資法の上限金利は、例外なく、少なくとも利息制限法の制限金利まで引き下げるべきである。

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