新潟県弁護士会

声明・意見書

2010年11月19日|声明・意見書

取調べの全面可視化を求める決議

1 2010年(平成22年)9月10日、大阪地方裁判所は、心身障害者団体としての実体がない組織に対し、虚偽の公的証明書を発行したとして逮捕・起訴された厚生労働省元局長に対して、無罪判決を言い渡した。
この事件で、大阪地検特捜部の検察官らは、捜査段階で元局長の元部下ら関係者に対する取調べで、元局長の事件への関与を認めさせる供述調書を作成し、これを拠り所として元局長を起訴した。しかし、元部下らの公判廷における証言や被疑者ノート等により、実際には元局長は事件に関与しておらず、供述調書の内容は検察官の強引な取調べにより、予め描かれたストーリーに沿って作文された虚偽であることが明らかとなった。また、この事件では、特捜部の取調べ検察官全員が、その取調べメモを廃棄したと証言し、取調べメモの廃棄が明らかとなった。

2 さらに、この事件については、同月21日、大阪地検特捜部の主任検事が、証拠として押収したフロッピーディスクを改ざんしたとして逮捕され、10月11日起訴された。報道によれば同検事は起訴事実を認めているという。その後、改ざんの事実を知りながら、大阪地検検事正及び次席検事に故意ではないとの虚偽の報告をしたとして、特捜部長と副部長も逮捕・起訴された。これが事実であるとすれば、大阪地検特捜部が、組織ぐるみで客観証拠を歪め、罪を犯していない一市民を逮捕し、5ヶ月にもわたり身柄を拘束し、冤罪に陥れようとしたことになる。検察が組織ぐるみで無実の人に罪を着せる犯罪行為をしていた疑いがもたれているものであって、まさに、刑事司法の根幹を揺るがす事態である。

3 このフロッピー改ざん事件の最中、今度は大阪府警において、警部補が、任意で事情聴取していた男性に対し、大声を浴びせ続けたりするなどして自白を強要し、その内容を録音したICレコーダーのファイルを削除しようとしたという事件が発生した。検察に次いで、警察における密室の取調べでも違法不当な捜査が行われている実態が明らかになった。

4 これまでも、数々の冤罪事件等において、捜査機関の違法な行為が指摘されてきたが、これら一連の事件において、我が国の刑事司法において、警察官・検察官の見立てたストーリーにあわせて、強引な誘導やときには脅迫によって虚偽の内容の供述調書を作成したり、証拠を廃棄したり、証拠の捏造までして無罪の証拠を隠すなど、意図的に証拠を操作してでも有罪に持ち込もうとする違法不当な捜査手法が行われてきたことが白日の下に晒された。

5 これらの事態は、当該警察官や検察官の個人的な資質、偶発的問題では到底すまされず、日本の刑事司法における捜査の構造的ないしは制度的問題であるとの認識に立って、冤罪を防止するための構造的・制度的な改革を行う必要がある。
そのためには、まずもって、違法不当な捜査の温床となっている密室での取調べを是正し、直ちに取調べ全過程の録音・録画(全面可視化)を実現する必要がある。全面可視化の実現は、取調べの過程を事後に検証することを容易にするだけでなく、冤罪の原因となっている違法不当な取調べ自体を抑制することができるからである。

6 これに対し、法務省は、2010年(平成22年)6月18日に「被疑者取調べの録音・録画の在り方について~これまでの検討状況と今後の取組方針~」(以下「法務省方針」という。)を公表したが、かかる法務省方針は、「録音・録画を行うべき取り調べの範囲についても、さらに検討を要する。」とするなど多くの検討課題を列挙し、「平成23年6月以降のできる限り早い時期に、省内勉強会としての検討の成果について取りまとめを行う」などとしている。
しかし、取調べの一部録音・録画では、捜査側に都合のよい部分だけが録音・録画されかねず、かえって危険である。また、法務省指針で示された「検討」に1年もの時間を要するとは到底考えられない。密室での取調べを理由とする虚偽自白、冤罪が頻発している中で今回の一連の事件が発生しているのであり、裁判員裁判も実施されていることからしても、現時点において、取調べの全面可視化は、喫緊の課題であり、もはや一刻の猶予も許されない。

7 当会も、取調べの全面可視化については、総会決議、会長声明等により再三にわたって訴え続けてきたところであるが、本件を契機にあらためて、被疑者等取調べの全面可視化の実現のため、全力を挙げて取り組むことを宣言するとともに、政府及び国会に対し、法務省指針を根本的に改めて、直ちに取調べの全面可視化の実現のための立法作業を開始することを強く求める。
以上決議する。

2010年(平成22年)11月19日
新潟県弁護士会臨時総会決議

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