新潟県弁護士会

声明・意見書

2010年03月1日|声明・意見書

取調べの全面可視化の早期実現を求める決議 決議理由

1 前回決議以降の可視化を巡る社会情勢
(1)当会の2008(平成20)年2月29日臨時総会決議
当会は、裁判員制度の施行を目前に控えた2007(平成19)年中に、「踏み字」の強要等の強圧的取調べによる虚偽自白の獲得の実態が明らかとなり被告人全員に無罪判決が言い渡された鹿児島志布志事件、無実の者が自白強要により有罪判決を受け服役したことが判明し再審無罪が確定した富山氷見事件が社会問題として大きく取り上げられたことを踏まえ、2008(平成20)年2月29日臨時総会において、「被疑者・被告人の人権を守るため、また、裁判員裁判の適正な実施を可能にするためにも、早急に取調べ全過程の録音・録画を義務づける可視化立法がなされ、裁判員裁判実施までに取調べ全過程の可視化が実現されることを強く求める」旨を決議し、政府、国会ほか関係各機関に送付した。
(2)裁判員制度の施行
2009(平成21)年5月21日には、裁判員制度が施行され、全国では既に多数の裁判員裁判が実施されている。今後は、被告人の自白の任意性・信用性が厳しく争われる裁判員裁判事件の係属が予定されているが、取調べ過程を客観的に再現する資料(録音・録画テープ等)なくして、密室での取調べで得られた自白の任意性・信用性を、密室での取調べの実態に関する知識に乏しい裁判員に判断させることは、刑事裁判における適正手続保障の観点からは、極めて問題がある。
新潟地方裁判所の管内においても、裁判員裁判の1号事件の公判が本年3月16日から25日までの間予定されている。また、複数の否認事件が起訴され、公判前整理手続に付されている状況である。
(3)政権交代と議員連盟発足
2009(平成21)年9月17日には、マニフェストに取調べの可視化で冤罪を防止する旨を明記する民主党を中核とする政権が発足した。
2010(平成22)年1月28日には、民主党の「取り調べの全面可視化を実現する議員連盟」(会長・川内博史衆院国土交通委員長)が発足し、取調べの全面可視化実現のための活動方針の協議を開始した。
このように、民主党への政権交代が実現したことにより、政治的にも取調べの全面可視化の実現可能性が格段に高まってはいる。
他方で、報道によると、鳩山由紀夫首相は、2010(平成22)年1月20日、被疑者取調べ全過程で録音・録画を義務づける刑事訴訟法改正案(可視化法案)の今国会への提出は望ましくないとの認識を示し、その理由として、小沢一郎民主党幹事長に絡む土地購入問題の捜査が本格化する中で捜査当局が抵抗する法案を提出することは「検察批判と受け止められる」と発言した。鳩山首相のこのような発言は、マニフェストで公約した内容を後退させる正当な理由づけには何らならない。また、中井洽国家公安委員長は、民主党政権発足直後に取調べの全面可視化とセットでおとり捜査や司法取引を導入する考えを示したが、いずれにも問題があるというべきである。
(4)新たな冤罪事件の判明
2008(平成20)年7月14日、東京高等裁判所は、いわゆる布川事件について、水戸地方裁判所土浦支部が下した再審開始決定を維持する旨を決定(検察の即時抗告を棄却)した。同決定は、勾留中の取調べにおいて否認に転じた櫻井氏が、拘置所から再び代用監獄に移監され、その期間中に自白に転じた経過に触れ、「虚偽自白を誘発しやすい状況に請求人らを置いたという意味で」「大きな問題があった」と厳しく指弾するとともに、自白状況の録音テープについて、「取調べの全過程にわたって行われたものではない」等として自白の信用性を補強するものではないとした。2009(平成21)年12月15日、最高裁判所が検察の特別抗告を棄却し、再審開始が確定した。
2009(平成21)年6月4日には、いわゆる足利事件の再審請求人である菅家利和氏が無期懲役刑から解放された。解放後の記者会見で菅家氏は、「逮捕後の調べで自白してしまったのは、刑事たちの責めがものすごかったから。『おまえがやったんだ。』、『早く話して楽になれ。』と言われ、否定しても全然受け付けてもらえませんでした。」、「別の2件の女児殺害事件を認めたのも、刑事に無理やり体を揺さぶられて『おまえがやったのは分かっている。』と言われたから。髪を引っ張られたり、足で蹴飛ばされたりもし、どうにもならなくなって『やりました。』と言ってしまいました。」と述べた。2010(平成22)年1月の宇都宮地方裁判所での菅家氏の再審公判では、菅家氏が検事の取調べに対し一旦「自白」を撤回し、再度「自白」に転じた場面の録音テープが再生された。自白の研究者らからは、無実の者が密室での取調べを受け虚偽自白に至る過程が典型的に示されたものと評されたところである。奇しくも、取調べの録音・録画テープを後日の公判において取り調べることが虚偽自白の防止や自白の任意性・信用性判断にとって有効かつ不可欠であること、取調べ過程の一部だけの可視化では不十分であり全面可視化が必要であることが示されたというべきである。

2 当会ないし当会会員の取り組み
当会は、2008(平成20)年2月29日の臨時総会決議後、取調べ全面可視化の実現を求める街頭署名活動、のぼり、団扇等のグッズ製作頒布、国会議員要請(2009(平成21)年10月31日開催の日本弁護士政治連盟新潟県支部主催の本県選出国会議員との懇談会にて実施)、会長談話・声明の発表(布川事件についての会長談話(2008(平成20)年7月16日)、足利事件に関する会長声明(2009(平成21)年6月23日)、民主党政権発足にあたって 会長談話(同年9月17日))等の取り組みを行った。
また、当会の個々の会員の捜査弁護活動においても、捜査機関に対する取調べ全面可視化の申入れ等の実践が行われている。

3 結語
上記した社会情勢や政治情勢に照らせば、日本弁護士連合会、当会を含む各地の弁護士会等が声を大にして要請してきた取調べの全面可視化実現に向けた流れは、確たるものとなっているというべきである。
この意味で、政府内で2010(平成22)年1月に召集された今通常国会への取調べの可視化実現法案(刑事訴訟法改正法案)の提出を見合わせる動きがあることは、極めて遺憾である。
そこで、当会は、改めて、政府、国会に対し、取調べの可視化法案の今通常国会への提出、可決成立により、取調べの全面可視化を早期に実現することを求めるべく、本決議を提案する。

2010(平成22)年2月26日
新潟県弁護士会臨時総会

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